Category: 絵本・本

子どものための読書記録サービス「ミーテよみログ」


以前、絵本・子育てを応援するSNS mi:te[ミ-テ]を、このブログでも紹介しました。
そのミーテのリリースから4年、ひとりで本を読めるようになった子どもたちのために、読書記録サービス「ミーテよみログ」が始まりました。基本コンセプトと基本設計を、少しお手伝いしています。
シンプルな機能のみに絞られているのでわかりやすく、親子で楽しみながら使えます。お薦めです。(無料)
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ここはそれぞれの子どものトップページとなる「マイホーム」。子どもひとりずつに、1本の樹。ミーテのキャラクター、テテとミミがサイトを案内します。
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「本のへや」では、読んだ本を探して本棚に並べます。最上段の棚には「おすすめの本」。
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本を探すのは、ISBN入力やキーワード検索で。
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「ちていの図書かん」には皆の読んだ本が蓄積。
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「空のひろば」では、読んだ本の記録数をふり返ったり、他の子どもたちのおすすめを知ることができます。
ただ、ランキングは励みになるけれど、下手をすると数だけを競うことになる懸念もあります。よいアイディアだなと感心したのは、順位を厳密につけない工夫。「たくさん読んだお友だち一覧」は、20~49冊、50~99冊、100冊以上と、大きく分けるだけにとどめて、細かな冊数を明にしていません。これだと、どの冊数の子どもも登場することができるし、細かなランキングにとらわれにくくなりますね。

読み聞かせを入り口に、自分で読みたくなって読書へと進んでいく。
物語や言葉を楽しみながら、子どもたちと本との付き合いが、長く豊かに続きますように。

子どものための読書記録サービス「ミーテよみログ」は こちら>>

「絵本」にまつわる話


実は、先の「教科書に載った小説」の「絵本」で、祖母のことを思い出しました。(「絵本」という以外に共通点はありません)
私事ですが、書き留めておきます。

昨年の夏の終わり、祖母が暮らす両親の家で1泊を過ごしました。
昼下がり、8歳の姪がピッケの絵本を作るというので、父のPCで1作つくり、3冊製本しました。1冊は自分、1冊は3歳の妹、1冊はひいおばあちゃん(祖母)にあげるのだと言って。
絵本ができあがり、祖母が寝たり起きたりで過ごしていた1階の座敷へ、3冊を携え駆け下ります。3歳も、とことこついてきます。
3人で祖母が座る座椅子を囲むと、姪は少し得意げな様子で、絵本のページをめくりながら大きな声で読み上げました。ピッケの絵を見て「たみちゃん(=私)の?」と問う祖母に、「ちがう、私が作ったの」と表紙の作者名のところを指し示します。
日頃「お年寄」に会うことがなく、腰が90度以上に曲がった祖母を時に恐がり泣くことさえあった3歳の姪も、この日はリラックスした様子で、祖母にもたれ顔を寄せ絵本をのぞきこんでいます。
祖母は、補聴器をつけてはいるものの、ほとんど聴こえていません。おそらく訳はわからず、でも、とにかくも、こうやって曾孫2人と孫(私)とが、自分のためにと絵本を読んでくれるのですから、嬉しそうな様子で聴いていました。
「おしまい」となり、閉じた裏表紙に持ち主のなまえとして自分の名前が入っているのを見て、眼を丸くします。(初期の仕様では、裏表紙に持ち主の名前を入れる欄があったのです)
姪が同じ絵本を3冊並べ、裏表紙の持ち主名を示しながら、「これは私、これは妹。これはひいおばあちゃんにあげるの。どうぞ」と手渡すと、なんとなくはわかったようで「ありがとう」と嬉しそうに受け取りました。
その3週間後、祖母は息を引き取りました。92歳の大往生でした。
もらった絵本を、ずっと大事に、繰り返し繰り返し読んでいたそうです。葬儀の日、他の遺品とともに絵本を棺に入れました。
初孫だった私は、幼少の頃から特に可愛がってもらいました。
大好きな祖母とのさいごの風景が、姪っ子たちと一緒にピッケの絵本を読んだおだやかな時間であることは、とても幸せです。
先月、その祖母の一年祭でした。
今でも、守られている気がします。

「教科書に載った小説」


すっかり秋ですね。
教科書に載った小説」佐藤雅彦編 を読みました。
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国語の教科書に掲載された小説12篇が収められています。
これが面白いのです。
ひょっとしたら私の使った教科書に載っていた作品もあるのかもしれませんが、「読まされ」て面白さに気づかず過ぎたのでしょう。それぞれの教科書を作った選者によって選ばれ、時を経て、この本の編者によって選ばれ、2つのフィルターを通って届いたということですね。
なかに「絵本」と題された、胸にせまる作品があります。
ある日小包で「ももたろう」の絵本が届く。中には12年前に亡くなった畏敬の友からの一通の手紙が入っていた。死を間近に控え、友の未だ見ぬ未来の子どもへ、1冊の絵本を贈ろうと計画し託した絵本。
作者、松下竜一のおそらく実話なのではないかと感じました。
他にも、とんかつ、絵本、少年の夏、父の列車、雛…など、珠玉のつまった1冊です。
編者佐藤雅彦さんHPの紹介文は こちら>>

THE BIG ISSUE JAPAN


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126(9/1)号のスペシャルインタビューは、Dick Brunaさん。 表紙はうさこちゃん。(別名ミッフィー。でも私にとっては「うさこちゃん」

インタビューの中の、印象的な箇所。
戦時中、ナチスから逃れるため4年間、人目を避け芸術に触れることなく暮らした。 その後、ロンドンで1年、パリで1年を過ごした。 街に芸術があふれ、ジュージュー音を立てて泡立っていた。初めて目にするものばかり! その色と線に酔っぱらい、こう言われた気がした。 私は絵を描かなければいけない!

122(7/1)号は、Eric Carle さんの特集でした。 そこにも、
子ども時代で思い出されるのは、灰色と茶色=色の無い世界。カラフルな作品は、戦時中に育った自身の経験を癒しているのかもしれない。 とありました。

素晴らしい作品を今も描き続けるおふたりに、共通して、抑圧された経験を経てこその表現への想いがあるのですね。

補足:
THE BIG ISSUE(ビッグイシュー)は、300円のうち160円がそのまま販売者(ホームレスの方)の収入になります。記事も良質です。

エリック・カールさん


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THE BIG ISSUE JAPAN 最新号の、スペシャルインタビューは、エリック・カールさん。 表紙も「はらぺこあおむし」です。
どうも最近よく見かけると思ったら、絵本「はらぺこあおむし」が誕生から40年、ご自身も先月80歳のお誕生日を迎えられたのですね。

エリック・カールさんは、絵本を「読めるオモチャ」と考えているそう。
また、子ども時代で思い出されるのは、灰色と茶色=色の無い世界。
カラフルな作品は、戦時中に育ったご自身の経験を癒しているのかもしれない と インタビューは結ばれています。

日本でエリック・カールさんの絵本をたくさん出版している偕成社さんのサイトにも、充実のコンテンツがあります。あの独特のコラージュの薄紙の作り方も紹介されていて、読みごたえたっぷり。

補足:
THE BIG ISSUE(ビッグイシュー)は、300円のうち160円がそのまま販売者(ホームレスの方)の収入になります。仕事をつくることで自立を支援する という考え方が好きです。記事も良質です。

コドモノクニ


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「子どもの本・1920年代展」
15年以上も前、たぶん大谷美術館だったかで開催された展覧会の図録です。
「コドモノクニ」、「子供之友」、「コドモアサヒ」など、大正~昭和のはじめの子どものためにつくられた絵雑誌。 色といい図柄といい、なんてシャレているのだろうと、夢中で観た展覧会でした。

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     上記図録 「コドモノクニ」の表紙の紹介ページ

おそらく近い切り口と思われる「童画の世界展」が、上野の国際子ども図書館で今年の2月まで開催されていました。
会期も長く、たびたび上京もしていたのに、次回こそちゃんと時間をとって と思っている間に、見逃してしまい、痛恨。
その国際子ども図書館に、オンラインのデータベースがあること、ご存知ですか。
ここに、「コドモノクニ」が追加になりました! 嬉しいなぁ~。
低解像度なのが少し残念ですし、もちろん本物を見ることにはかないませんが、でも、これだけ系統立って一覧できるのは、とてもありがたく、魅力。
特に、絵本に興味のある方やイラストを描く方に、お薦めです。

国際子ども図書館 絵本ギャラリーは こちら>>

絵本こそだて日記 ミーテ


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「絵本×子育て」に特化したSNS、mi:te[ミ-テ]をご存じですか?
特に、子育て中で絵本の読み聞かせに興味あるママさんに、うってつけのサイトです。 記録にも励みにも友だち(ミーテでは「よみとも」)づくりにも、役立ちます。 KUMON(あの公文式のKUMON)の子育て応援活動の一環として運営されています。

ピッケのタッチディスプレイ版がある、ファミリオB1階「キッズライブラリーフードコートPLAY!」の絵本コーナーは、ミーテのセレクションによるものなのですよ。 ここも、とっても良いのです。

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         国内の絵本が500冊+北欧の絵本が100冊

1年前に、ミーテのサイトを知り、いちど会員登録しかけたのですが、もろもろの設定が子どもがいること前提なので、気後れしてしまい断念。 あれからさらにコンテンツも充実しています。
会員にならなくても、かなりのページを読めるのですが、全てを読みたいという気持ちに抗しきれず、とうとう入会してしまいました。

どこの出版社への偏りもない、絵本を好きなママたちの生のデータが集積されています。   会員数18000人だそうで、それだけ分母が大きいと、データの精度も高いのです。 子どもの年齢別(0~10歳)、都道府県別、去年の今日読まれた絵本、なんていうランキングまであります。
読み聞かせガイドや絵本作家さんのインタビュー記事など読み物も面白いです。 お薦めです。

絵本こそだて日記 ミーテのサイトは こちら>>
※ 登録無料、招待制ではないので誰でも登録できます。

空を仰ぐ


自宅と事務所の往復(ときどき接骨院経由)
の開発漬けの日々の中、この土日だけは休日!

年に一度、これだけは何があっても、の貴重な時間。
松居直先生や吉田新一先生のお話を伺える
小さな集いに参加しました。

日本の絵本が変革期にきている。
・ 日本語の伝承が危うくなっている。
 日本語を生き生きさせる「調べ」が失われている。
・ 絵を見せようとする絵本が多すぎる。
 物語を絵で語るということを忘れている。

日本の子どもの絵本を豊かなものに育て上げてくださった先生方が
今の日本の状況を憂いていらっしゃる。
途絶えさせてしまったのは私たちの世代なのだと、胸が痛む。

私が今やろうとしていることを、このまま進めてよいのかと自問する。

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小田原あたりの空(車窓より)

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上野の空
※いずれも接写モードのまま撮ってしまいボケボケ…。

ムナーリの絵本


滋賀の展覧会場で、「4200円/冊、支払いは現金のみ」
に躊躇してしまい買えなかったムナーリの絵本。
やっぱりどうしても欲しくて、手に入れました。

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『the birthday present』
5歳になった息子さんのために構想されたというシリーズの1冊。
(全10冊。ただし、うち1冊は原画も行方不明とのこと)
フリップページを活かしていることが全冊に共通で、
でも、それぞれ違う試みがされていて、
主題としかけ(フリップ)が絶妙の関係です。
アイディアも、グラフィックのセンスも、何もかも脱帽。

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お父さんが、息子へのプレゼントを持って自宅へと向かいます。
ところが、乗り物が次々と故障して…。
トラック→乗用車→バイク→自転車・・・
小さな乗り物に乗り換えていくのにともない、フリップも小さくなります。
(画面左すみには、距離がわかる道標が描かれています。)
ページを繰るのが、とても楽しいです。

買った店は、 「ランダムウォーク」
OPENして早5年だそうですが、まったく知りませんでした。
元町の丸善が撤退してしまってから、洋書をまとめて見れる場所が無く
さびしかっただけに、こんな洋書屋さんができて、嬉しい!

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入り口はちょっと見つけにくいです。  細い階段をのぼった2階にあります。

『ブルーノ・ムナーリ展 あの手 この手』


昨年末、東京で逃したムナーリ展。
半年後巡回してきた滋賀で、やっと観てきました。

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神戸からだと片道2時間かかるので、ちょっとした小旅行です。
滋賀県立近代美術館には、数年前『アンデルセン生誕200年展』のときに出かけたことがあり、今回が2回目。
緑豊かな環境の中に図書館と美術館が並んでいて、素敵な立地です。

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展示は、よく知られた絵本やグラフィック、プロダクトデザインといった
側面の他に、子どものために盛んに行っていたワークショップ、
コピー機やダイレクト・プロジェクションを使っての試みなど
ムナーリのさまざまな面を見せていて、見ごたえがあります。

常設では、大好きな小倉遊亀や、以前から機会あれば観てみたい
と思っていた紬織の志村ふくみの展示もあって、こちらも堪能。
おふたりとも、滋賀県の出身なのですね。
さらに、たまたま絵本づくりのワークショップをしていたので、
あつかましくも見学させていただきました。
ムナーリに関連づけての企画とのこと。
(夏のファーブルの展示のときには昆虫図鑑を作るワークショップ。)
子ども~大人まで、幅広い年齢層対象なので、事前に用意してある
オリジナルキッドも3通り。創作の自由度を選べるようにしてあり、
とてもよく考えられた質の高いもので、感心しました。
事前の準備にも、かなりの手間をかけ、臨まれているのでしょう。
見習いたいなぁ と思いました。

ところで、クルクルとぜんまい状の1本の針金を使う、
よくスケッチブックやノートでみるあのリング製本の方法は、
もともとムナーリによるアイデアなのだそうです。
これだと、ワークショップで絵本を作るときも、ページをバラで
作っておいて、後でページの並べ順を検討できます。
最後に、リングをくるくると回して穴にくぐらしていくだけ。
あたりまえに見慣れていましたが、最初に思いつくって、
すごいことですね。

と、すっかり午後遅くまで、美術館で遊んでしまいました。

ムナーリ展は、滋賀県立近代美術館が、~7月6日まで。
秋には(9月13日~10月26日) 愛知県刈谷市美術館へ巡回します。