11月5日、甲南女子大学で開催された第103回「子ども学」講演会で、「子どもが物語る意味~メディアを通してできること~」をテーマにプレゼンターを務めました。私からは実践面の話、佐藤朝美さん(愛知淑徳大学)が学術的に深めてくださいました。子どもたちの作品に助けられて任務完了。今後も、デジタルメディアを子どもの創造表現に活かしていきたいと、想いをあらたにいたしました。
そして、講演後にご案内頂いた大学構内「自然観察園」。平面図で見てなめてましたっ。イノシシよけの鈴を提げ、汗だくの登山。辿り着いたツリーハウスは、子どもの頃夢見たまんまの光景。ちょうど夕陽の時刻で、ハウスからの眺めも抜群でした。
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29日(月曜)は、札幌市立大学 芸術の森キャンパスにて、DEVELOPMENTAL/オープントーク「子どもたちがコンピュータと出会うとき」(杉本達應研究室主催)としてお話してきました。
学生さんに加え、同じメディアデザインコースの先生方、学外の企業の方もご参加くださり、なごやかな場となりました。皆さんに、それぞれの関心領域における課題解決の絵本をつくり発表もしてもらいました。
小学生向けの防災啓発Webサイトを作ることを卒業研究のテーマにしている学生さんは、子どもたちに「おはし」を伝える絵本をつくっていました。(「押さない」「走らない」「しゃべらない」で「おはし」だそうです。はじめて知りました)
杉本達應先生より「スマホやタブレットの普及にあわせて、教育でのICT活用はホットな話題です。今回は、そんな時代の波に流されていると見失いがちになるデジタル以前の大事なことを再確認できる時間になりました」と講評いただきました。(追記:詳細レポートをアップしてくださいました)
講義後、学内を案内していただきました。清家清氏設計の学舎はバウハウスのようで、感嘆の連続でした。隅々美しく機能的にデザインされていて、建物だけでなくさりげなく置いてある椅子(ハンス・J・ウェグナーやコルビジェ!)など学内のすべてがグッドデザインで満ちています。天井高、ドアなど開口部の寸法も、基本モジュールから150%scaleな感じで、とにかく広い。眼に入るすべての物は美しい。そして学内の人口密度が低い。学生さんは思い思いの場で創作しています。教育理念が環境として具現化され、前身の札幌市立高等専門学校の開校から25年近く経つ今も受け継がれていて素晴らしいです。
主催者によるレポートはこちら>>(参加者のアンケートもあり)
先週は2つの大学でゲスト講義させていただきました。
6月17日。青山学院大学 教育人間科学部3年生、杉本卓先生のゼミでは、自身の関心領域で自由に課題を設定し、それを解決する絵本をひとり1台環境でつくってもらいました。
教員免許取得希望の学生さんもいて、半数近くが幼児教育に関する課題を設定していました。大学院生も2人参加、嬉しいことに内ひとりは昨年に続いての自発的な再受講でした。ICTに対しては懐疑的で、前回は反発する気持ちで講義に臨んだとのこと。受講して考えが変わり、親戚の子どもにもアプリを薦めてくれてその子が何10冊も作り続けているそうで、今ではICTは使い方次第と考え、講義も終始うなづきながら聞いてくれました。
翌日の明治大学 国際日本学部では、「教育の方法と技術」の「タブレット活用の実践と体験」として話しました。
まず岸磨貴子先生による導入。学校知と日常生活の乖離があり、学校で学ぶことを実際の生活で活かすことできていない。例えば「みかん3個とりんこが2個あります。かけたらいくつ?」と 問われれば「6」と答えてしまうようなことが起きている。日常との関連を実感できるような概念理解が重要であると、ジャスパープロジェクトを例に語られました。
岸先生からのバトンを受けて開発のねらいやそのためのデザインについて伝えたあと、5,6人×11の各グループでテーマを決め、深い理解を促すための方法としての「物語」、絵本づくりを体験してもらいました。
以下は、学生さんのアイディアから抜粋。
数学では、cos(コサイン)を身近な例(ケーキを切る)で説明、速さと距離の関係を物語の中で考えさせる、割り算の商と余りの関係を買い物の例で示す、国語では難解な言葉の起源を物語で解説、歴史では、黒船来航時の日米間のやりとりを物語でわかりやすく伝える、英語では、録音機能も使って自己紹介を書く読む話せる、前置詞の視覚化理解、道徳では、食べ物が足りないという状況設定を用意し考えさせるなどなど。
びっしり書き込まれた「ふりかえりシート」の中にも、さらに多くの授業活用の提案や気付きが記されていました。
・抽象的な概念を絵を使い具体的に理解することで、学校で養った力や知識と、実生活で必要となる力や知識の間のギャップを埋めることができる。
・絵本にすることで積極的に学習に取り組むことができるし、自身の学習理解度を視覚化し整理することができる。
・身についた知識を体系的に人へ説明できるというのは全ての科目で重要であり、深い理解につながる。まとめの時間に取り入れるとよい。
・新しい単元に入るときの導入として。未習事項の英文や数式の概要をイメージでとらえてもらう。
・英単語などの暗記系にも向く。イメージが合わさることで記憶に残りやすい。
・自分のオリジナルで考えつくる教育方法は、学習者の興味もわき楽しく学習できるので、学ぶことが好きになると感じた。
実に密度濃い90分でした。
研究者や若い世代の人と話すと打てば響くように伝わり、ディスカッションによる収穫も多くて、先月の名古屋から続いて、大学で話すことが楽しいです。
来週は札幌市立大学へ伺います。
追記:
岸磨貴子先生によるブログ「6/19 特別講義として「ピッケの作る絵本」」
12月21日、内田洋行新川本社で開催された日本教育メディア学会企画委員会ワークショップ『子ども(幼児・小学校低学年)向けメディア教材を用いた思考をはぐくむ学びと遊びのデザイン』でピッケの開発を通しての子ども向けメディア教材についてお話してきました。
ガチャピン&ムックやしまじろうの沢井佳子先生のお話も、ポンキッキやみーつけた!のディレクター森田倫代先生のドラマワークショップも、ほんとに楽しかったー。脳と身体とどちらも喜んだ感じです。子どもの教育メディアを牽引されてるおふたりとご一緒は恐れ多すぎでしたが、良い学びでありました。ご参加くださった皆様、お世話になった皆さま、ありがとうございました。
「未踏事業SPECIAL」座談会とインタビュー動画が、日経ビジネスオンラインのサイトで公開されました。
未踏のページに引っ越したようです。
インタビューWebサイト
インタビュー動画
(Flashを使うのをやめて mp4にしたようなのですが、かなり重いです…)
平成23年度「教育の情報化」推進フォーラムで登壇しました。
会場は、国立オリンピック記念青少年総合センター 国際交流棟。
「ICT夢コンテスト」地域部門でCEC奨励賞を受賞した「夏休みメディアリテラシー体験講座 絵本をつくろう」尾道でのワークショップの事例をご紹介しました。
帰国後の週末6/2(土曜)は、BEATセミナー@東京大学大学院情報学環 へ。
全体テーマは「子どもとデジタル絵本」、いただいたお題は「子どもにとっての絵本の役割とデジタル絵本の可能性」です。
まず、東大情報学環 特任助教の佐藤朝美さんから、絵本の読み聞かせに関する要因、Narrative(物語行為)について、その歴史と認知機能発達の見地からレクチャ。バトンを受けて次は私。ピッケの話と、2つのソフトの開発を通して思うことを話しました。
<デジタルへの懸念・課題>
・ハードもインターフェースも、子どもに与える物としてまだまだ不十分。
くるっと丸めてポケットやカバンに入れて公園へ持っていけるような物になってほしい。
・造形物としての絵本をどう考えるか。
アナログ絵本では、ハード対ソフトが1対1。
子どものコンテンツは、絵本に限らず、ハードとソフトが分かち難く結びついている。
造形物に対する愛着や、所有したい気持ちもある。
ページめくりなど身体性をともなう仕様には、ある種の強さがある。
・絵本に、絵本を手渡す大人が必要であるように、デジタル絵本にも、手渡す大人が必要。
・デジタルの、繋がろう、外へ広がろうとする特性をどう活かすか。
<私の考えるデジタル絵本の可能性>
・従来の子どもの絵本は、電子書籍の時代になっても残る。
・既存作品のデジタル絵本への移植は、図鑑的な絵本、おもちゃ・ゲーム的な絵本には向く。(物語絵本、特に完成度の高い物語絵本ほど、難易度が高い)
・デジタル絵本としての独自の仕様を考えることで、新しい表現が生まれる。
・デジタルの、繋がろう、外へ広がろうとする特性を活かし、絵本という領域にとどまらず、横方向に広がる周辺領域も合わせてデザインすることで、次の展望がひらける。
日本出版販売(デジタル絵本tocco)の正道寺裕子さんによる、物理シミュレーションを用いたデジタル絵本「まり」の開発話も興味深かったです。ビジネスとして成立することも満たしながら、アナログ絵本との違いをどう出していくかを悩みながら開発したと。
こども心理学がご専門の石川由美子さんは、「絵本を読みあうことは、人は信じるに足りうる存在であるという確信を育むことである」と話されました。とても共感します。iPadなどデジタル機器はそもそも1人でする物体のカタチであること、紙の絵本とは質的に違うこと、100年後に見つけたとき「これが私の絵本だよ」と言えるものになるか、など懸念を込め語られた数々は、一般の大人向け電子書籍とは異なり、子どものデジタル絵本については、よくよく考えていかねばならぬことと常々感じています。
「子どもとデジタル絵本」のテーマに、絵本の出版関係者、教育関係企業の方、学術研究者、保育関係者、学校の先生、自治体の方、開発者、地域で絵本の読み聞かせ活動をなさっている方、大学生など、さまざまな領域の方がご参加くださいました。
セミナー時にもお話しましたが、いつの時代においても、子どもには良質のものを届けたい。これは私たち大人の責務です。「主役は子どもである」を忘れず、デジタル絵本を開発し、子どもに手渡し、良質の絵本体験の場をぜひご一緒につくっていきましょう。
BEATセミナー@東京大学大学院情報学環 レポートページは こちら>>
朝倉発表分のスライドを以下↓に公開しています。
少し前になりますが、情報処理学会の論文誌「デジタルプラクティス」、Vol.2 No.2(2011年4月15日刊行)「世界に飛び出す日本のソフトウェア」特集に、投稿論文が掲載されました。昨年8月~正月頃に書いたものです。
大学も論文でなく卒業制作で卒業してるので、人生初の「論文」。
最初まるでエッセイだったのが、なんとかそれらしくなったのは、査読の方(KDDI長谷川亨さん)が丁寧に見てくださったおかげです。
内容についてはもちろん、構成順や、申し訳ないことに「体言止を避ける」等論文書きのイロハまで。ほんとにお世話になりました。
竹内郁雄さんの宣言文が素晴らしくて、書けなくて途中で投げ出しそうになるたび読みなおしていました。
「ソフトウェアには,開発した個人やグループの「人となり」が色濃く反映されます.それは実践のノウハウかもしれないし,ひょっとして哲学,あるいは生き様といったものかもしれません.」
「いままでになかった新しい論文発表の道を切り開きましょう.自分の仕事を論文にするという楽しみをぜひ味わいましょう.」
他の論文も面白いです。なかでも、Lunascape 近藤秀和さんの招待論文と特別インタビューが、とても読み応えありました。
いずれもオンラインで読めます。
ワークショップ知財研究会シンポジウム『ワークショップの事業化を考える』で講師のひとりとして話しました。会場は、夏にデジタルはらっぱをしたのと同じ、3331 Arts Chiyoda です。
ワークショップの事業化ができているわけではないのに講師なんていいのだろうか…とは思ったのですが、ワークショップも含めて、ピッケの事業化についてあれこれやってる様子をお話させていただくことで、皆さんの他山の石になれるやもしれず、ジタバタやってるそのままを、お話させていただきました。
申し訳なかったのは、風邪がノドにきてしまい声が出なかったこと。聞きづらくてすみませんでした。
トップバッターは、ケミカルエンターテイナーのなおやマン&しま:アイさん。
シンポジウムとは思えないショーアップされた講演(?というか「エンターテインメントショー」)で、観客を魅了。おふたりのエンターテイナーぶりに、プロフェッショナルとはかくあるべしを見た想いでした。ワークショップでちゃんと生計をたてている数少ない実践者です。
次は私。この盛り上がった後、出て行きにくいっ。。。普通にパワーポイントです。子どもたちの作品や記録ムービーに助けられて。
最初の15分は、自己紹介と「ピッケのおうち」「ピッケのつくるえほん」の紹介。後半30分で、ワークショップでの活用と事業化について話しました。
事業化することも、ソフトの開発と似ていて、進みたい方向があり、自分のあらゆるリソースを総動員し、たくさんの人に助けてもらい進めています。事業を軌道に乗せ、ソフトの開発を続け、これからも、おはなしづくりの活動をひろめていきたいと思っています。
3番目ラストバッターは、ビジュアルプログラミング言語「ビスケット」の原田康徳さん。
コンピューターは粘土である。
ものをつくり表現することは、大きく2つに分類できる。クレヨンで絵を描いたり粘土で何かを作るのは「直接表現」。オーケストラのために楽譜を書いたり建築物のために設計図を書くのは「間接表現」。「間接表現」には設計が必要。
設計してものをつくる楽しさと面白さを伝えたくて、ビスケットを開発し研究室の外へ出て子どもたちとビスケットをされています。
あとのパネルディスカッションで、なるほどと思ったのは、ワークショップの料金についての質問されたときのなおやマンさんの回答。
ワークショップと言わずショー(ヘンテコパーティ)と呼ぶようにしているのだそうです。したがって「出演料」。すると随分ちがうのだそう。
大月ヒロ子さんを座長にパネルディスカッション、続いて茶話会と、盛りだくさんな1日を満喫しました。
ワークショップ知財研のページには当日の映像もあります こちら>>
活動レポートのページに当日のスライドをアップしました こちら>>
デジタルワークショップ開発者組合のページにも レポート>>
来年最初のワークショップは、広島です!
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「親子でコミュニケーション!!パソコンでつくるオリジナル絵本」
日時:2011年1月22日(土) 10:30~12:30
会場:幟会館 2F研修室(広島市中区八丁堀3-1)
定員:親子20組(3歳以上の幼児親子)
講師:高宮由美子、朝倉民枝
助手:三宅真理
参加費:1000円(1組)
主催・問合せ・申込:子どもコミュニティネットひろしま
後援:広島市教育委員会
詳しくは こちら>>
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1月末には、シンポジウムで講師とパネリストを務めます。
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テーマ:「ワークショップの事業化を考える」
日時:2011年1月30日(日) 13:00~
場所:3331 Arts Chiyoda
東京都千代田区外神田6丁目11-14
座長:大月ヒロ子
講師:なおやマン/島崎直也、原田康徳、朝倉民枝
主催:ワークショップ知財研究会
協力:株式会社CSK、有限会社イデア、株式会社文化総合研究所
参加費:シンポジウム 無料 / 茶話会 500円
定員:100名 (先着順)
詳しくは こちら>>
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このワークショップ知財研のシンポジウムには、前から参加したかったのです。上京のタイミングとなかなか合わずで、いつも見送り。
シンポジウムの内容と茶話会の趣向がすばらしい、参加者の感度が高くて、シンポジウム後の参加者同士の話も価値ありと、前々から評判を耳にしていました。まさか話す方になるとは思ってもいませんでしたが、おかげでフルに参加できます。
なおやマンさんは、自分たちで企画したショーアップしたワークショップを実践するプロのワークショッパー。ワークショップでちゃんと生計をたてている数少ない人です。「ピッケのつくるえほん」パーソナル版お買い上げ第1号のお客様でもあります。あっ、今日12/26は息子さんの2歳のバースディ。オメデトウ!
原田さんは、ビスケットの開発者。工学博士で、ワークショップデザイナーの資格までもっていらっしゃいます。ビスケットでは、絵でプログラミングができます。私は、プログラミングは、世界の捉え方に繋がると思っています。子どもの頃から何かが「理解できる」っていうのは、頭の中で図形で描けることなのです。(それを「ベン図」と呼ぶのだと大人になってから知ったのですが)ベン図だったり、ツリー構造だったり、どの種類の図で描くのが最適かがわかり、その図でどう描けるかが見えることが、すなわち理解でした。ビスケットで何かをつくることは、たぶん、その感覚と近いです。この日は、ビスケット×新しい教育の話も聴けるのでは、と期待しています。
座長の大月ヒロ子さんは、ワークショップ、アート、子ども界隈の人で知らぬ人はないという、この世界の第一人者。
キャリアスタート当初、板橋区立美術館の学芸員でいらした頃、美術館に泊っちゃおう!というワークショップをなさったのですよ。なんて柔らかく、わくわくする企画でしょう。そして今日まで、国内外でたくさんの子ども関連のイベントや施設を手がけていらっしゃいます。半年ほど前に、東大情報学環コモンズのあの素敵な内装のコーディネイトも、大月さんによるものと知りました。おしゃれなだけでないコーディネイト、どなたによるものなのだろうと思っていたので、納得でした。
そんなこんなで、自分も話すのだというプレッシャーを忘れるほど、当日が楽しみです。ワークショップ、子ども、教育周辺に関心のある方、どうぞご参加ください。お申し込みは、こちらから>>