Monthly Archives: 7月 2022

「ピッケのつくるえほん」ワークショップ@豊橋


7月9日土曜日、元中央図書館長の伊藤孝良さんと外国人集住地区へ出かけてきました。午前は市営西部住宅の集会所で。冒頭の読み聞かせは、小1女児が「私が読みたい」と『はっぱのおうち』(征矢 清 作、林 明子 絵、福音館書店)を大きな声で読んでくれました。大型絵本はひとりで持つには重たくて、ページめくりはお母さんにお任せしました。

テーマを「**のおうち」または自由としたところ、樹上の家、友だちと2人の秘密の家、外から見ると小さくて中に入ると広大なオバケの住む家、海の家、冬の家、みんなが楽しむ家、動物たちの家など様々なおうちの話ができました。
つくりたいテーマがある子もいます。ミャンマールーツの小1年生作は「いつまでねてるの」。前回友だちの小1女児が実話を膨らませてつくった「おかあさんおきて。」に触発され生まれたお話です。なかなか起きてくれないお母さん、基の友だち作では丸1日でしたが、本作のお母さんはさらに強者で、6月から1月までなんと半年以上寝ています。

5歳男児はゴジラが大好き。この日の新作も「ゴジラ たい にせもののゴジラ」でした。持って来てくれたこれまでつくった絵本には、書き込みがいっぱい。帰ってから手書きでお話を書きこんでいるそうです。

小1女児もポシェットから取り出して見せてくれました。何回も繰り返し読むので破れないようにしてほしいとお母さんに頼んだそうで、全作品全ページに透明テープを貼って補強してあります。

毎回、日本語と外国語の絵本を用意してくださるのは図書館司書さんです。その中からワークショップ開始前、弟ができたばかりのお兄ちゃん6歳に『おとうとがおおきくなったら』(ソフィー・ラグーナ 文、ジュディ・ワトソン 絵、当麻ゆか 訳、徳間書店)を読みました。「(自分の弟は)未だちっちゃいよ、赤ちゃん」と言いながら、気になる箇所を指さし絵の隅々までを味わっていて、読んでいるこちらまで楽しくなりました。

移動し午後回の県営岩田住宅へ着くと、すでに子どもたちの姿が。前回参加の6年生からの口コミで、同学年の一群とその弟妹たちが待っていてくれました。先に会場に入った低学年の女児たちが、並べた絵本を読み始めたので「始まったら読んでくれる?」と尋ねると「いいよ」と快諾、練習を始めました。
さて定刻、前へ出てふたりで声をそろえて読んでくれました。

コロナによる中断からの再開以降毎回参加してくれていたのにこの2回お休みだったひろしくんが、家族で来てくれたのも嬉しいことでした。家庭では母語のみ、幼稚園へは通っておらず、今春小学校へ通い始めてから日本語をがんばっています。参加5回目の作品は「ハナビ」。弁天島花火大会で、生まれて初めて打ち上げ花火を見たのだそうです。

6年生たちはちょっとハスに構えてクール、時々大騒ぎしつつも、それぞれ完成させました。そんな彼らのひとりが「(前回持ち帰った)絵本を家で見せたよ」と教えてくれました。

2年ぶりに参加のブラジル籍の姉弟も製本して完成。

でも、そろそろ発表会が始まるという頃「雨が降る前に帰っておいでとおばあちゃんに言われてる」と空模様が気になりそわそわ。「待ってて!おばあちゃんに言ってくる。1号棟だから、すぐだから!」と言い終わらぬ内に駆け出し、ほんとにすぐ、おばあちゃんのOKをもらい傘を持って戻ってきました。
子どもたちのルーツも家庭環境も様々ですが、団地住まいの子どもたちは両親そろって働いている家庭が多く、学校から帰宅しても子どもだけだったり、祖母がみている場合も多いようです。土曜日も両親ともが仕事という子もいます。

午後回の参加者は11人。子どもたちが戻ってきて嬉しいです。反面、午前回はお手伝いくださる日本人女性があり助かっているのですが、午後回は人手不足で、もっとひとりひとりを丁寧にみてあげたいというもどかしさも感じています。
次回は8月13日土曜、10時~西部住宅の第2集会所、14時~岩田住宅の集会所です(主催:市民ボランティア、協力:中央図書館)。外国につながりのある子どもたちとそのご家族の参加をお待ちしています。お手伝いくださる方ありましたら大歓迎です。>>連絡先(問い合わせ種類欄の選択は「その他」で)

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2つの大学でゲスト講義


ゲスト講義で2年ぶりに上京しました。東京は酷暑、5限を終え18時を過ぎても息苦しいほどでした。

6月29日は相模女子大学 子ども教育学科(七海陽先生)へ。将来、保育士や幼稚園教諭になる学生さんたちが対象です。「ピッケのつくるえほん」iPad版リリース当初から10年に渡り授業の中で絵本づくりをなさっていて、私のゲスト講義担当も5年余となります。オンライン授業となった昨年度はそれぞれ自宅等からの受講ゆえ講話のみとしましたが、対面の今年度は、90人が2人1台で使えるよう機材、アプリとも万全に整えてくださっていて体験もできました。
講義の前半では、ICTの使いどころ、子どもの物語世界を拡げていく活動のデザインや、芦屋市での導入と現場の先生方による活用について伝えました。学生さんたちには、ICTも適所に使いつつ、子どもたちが夢中になる創る「遊び」をデザインできる人になってほしいです。

7月1日は青山学院大学 教育人間科学部(杉本卓先生)へ。こちらは一般企業へ就職なさる学生さんたちなので、活動事例は社会課題に関わる2件、外国籍の子どもたち対象と病児訪問のコロナ禍での対応に絞って話しました。ともない、子どもの人権についても触れました。教育を受ける権利について憲法で規定されていますが、解釈や判例によって「日本国籍を有する国民」に限定していて外国人の子どもに就学義務はありません。そのため外国人の子どもたちへの教育は、各地方自治体の対応に任せられているのが現状です。これに対し 国際条約の「子どもの権利条約」では、全ての子どもが人種や国籍などいかなる理由でも差別されず、医療、教育、生活への支援などの権利が保障されています。1989年に国連で全会一致で採択され、翌年国際条約として発効、日本も1994年に批准しました。国際条約は憲法より下位ですが法律より優位の法的効力をもちます。ですから本来であれば、法令や行政等は、条約に沿って解釈・運用されなければなりません。批准から28年を経てようやく、今年4月に子どもの権利に関する国内法をつくる議論が国会で始まりました。こども家庭庁の先行きも気になるところです。子どもの養育や教育は家庭のみ学校のみにその責を負わせるのではなく、社会全体で担うものです。
学生さんたちへは、職業としては直接たずさわらないにしても、子どもが幸せに生きる社会を共につくりましょう。という話をしました。

両校ともZoomでもOKと言って頂いたのですが出かけてよかったです。どちらの学校も学生さんたちが朗らか和やかで嬉しくなりました。画面越しの1対多で話す時とは私の側も自ずと違ってきます。事前に大枠は用意するけれど実際に何を話すかは、場や聴き手によって引き出されるので。七海さんや杉本さんと久しぶりにお話できたのも楽しく有意義でした。

キャンパスの並木って良いですね。左が相模女子大、右が青学大。

6月22日交付の「こども基本法(令和4年法律第77号)」を見ると「全ての子ども」とまたしても曖昧になっています。今度こそ国際条約に準拠するなら、国際条約と同様に明記してほしい「子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されない」は書かれていません。「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」とはあるので、正しい解釈、運用を期待します。「こども基本法」(内閣官房Web)

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