Monthly Archives: 8月 2019

「ピッケのつくるえほん」ワークショップ@豊橋


8月24日土曜日、豊橋市中央図書館の自主事業として、外国ルーツのご家族が多く暮らす地区へ出かけてきました。今年度になって3回目、通算で6回目です。

テーマは「○○のひみつ」。いつものように伊藤孝良 元図書館長の読み聞かせからスタート。司書の田中さんが揃えてくださった「ひみつ」絵本の中から、難易度や長さを考慮して「シロクマくんのひみつ」を。ここから着想を得た作品もありました。

小2女児は「おねえちゃんのひみつ」、友だちの家へ行くと偽って、弟の好きなオモチャを買いに出かけプレゼント。「どうぞ」「ありがと」。
小2男児は「おぉきなはんばーがー」、ドアの向こうに隠してあった巨大ハンバーガー(まあくんの大きさと比べてみてください↓ )。裏表紙では「あうっ!」とかぶりつく音を録りました。上手いです。

テキストも録音も母語のみになっている子について、キーワードだけでも日本語に挑戦してもらおう、というのが、今回の密かな目標でした。
継続参加してくれている10歳と6歳の兄妹は、お兄ちゃんはブラジル人学校、妹さんは未就園、家庭でも母語のみです。ふたりとも日本語はほとんど解さないので、いつも自治会の舛木さんの通訳に頼っています。今回お兄ちゃんがつくったのは「うっきーのドーナツ」。完成したポルトガル語のお話に、要所のみですが日本語も併記、録音も部分的に日本語でがんばりました。
美味しそうなまんねんさんのドーナツ。でも「食べないで!」。なぜなら、食べると小さくなってしまうのです。

過去2回は録音をしなかった6歳の妹さんも、母語ではあるものの初めて録音までできました。上映時も嬉しそう。

生まれるお話は基本的にはフィクションですが、実生活や本人の心情が覗き見えてくることもあります。

「あめのひのひみつ」3年生女児 (全9見開きからの抜粋)
雨がほんとは嫌いなのに、友だちに合わせて「ぼくも好き」と言ってしまった。「ごめなさい、許して」と謝るが「考えとくね」と言われてしまう。裏表紙は「許してくれるかなぁ」。

毎回「(録音の再生ではなく)自分の声で発表したい」という4年生女児。今回もその姿勢を貫きライブで立派に発表しました。

午後の県営岩田住宅は、開始時刻の30分も前から集まってきてくれました。一方、午前の市営西部住宅は、今回も家庭教師状態。いちど途切れてしまった状態からどう立ち直すかは課題です。

翌25日は、名古屋大学大学院小川明子研究室によるデジタル・ストーリーテリング「メディア・コンテ」。初の試みです。通常は写真やビデオでするところを、今回はピッケで。場所は前日と同じ県営岩田住宅の集会所。前日も参加してくれた子が3人、はじめて来てくれた子が3人。
外国ルーツの方がファシリテータとなり、子ども1人に1人ずつ付きました。
お題カードをきっかけに話しつつ、その子の中の関心事を浮き彫りに。

そうして見つかった「話の種」からお話を紡ぎます。なので、いつものピッケとは異なりノンフィクションとなります。
私は、フィリピンルーツの4年生男児を担当しました。日本に来て未だ2年とのこと。他のファシリテータは母語と日本語ができるのに、私は日本語のみゆえ申し訳ない。通じない単語は、お互い絵に描いたりしながら。放課後の校庭でするバスケットボールが好き。回転ジャングルジムがあるK公園より、大勢の友だちと鬼ごっこができるT公園の方が好き、たとえお母さんの言いつけに背くことになろうとも。公園も学校も友だちがいっぱいいるから楽しい。ということで、題名は「ともだちいっぱい!」。

これまで母語のみになっていた前述のブラジルルーツの兄妹が、自らすすんで、文章も録音もすべて日本語でつくりました。
10歳のお兄ちゃんは、柔術で金メダルをとるおはなし。時々お手伝いしてくださるブラジルルーツの青年ブルーノさんが付いてくれました。
6歳の妹さんは、最初は日本語は無理と言っていたけれど、途中で「日本語で書きたい」と自分から申し出たそう。日本語をがんばったことを、小川明子先生にほめてもらったことが嬉しくて、そのことをお話にしました。作中、先生と手を繋いでいて、裏表紙では「せんせいだいすき!」。

初の日本語絵本を完成させた後も、もっと書きたくなって、お手本をなぞり書きしていました。

付いてくださったブラジルルーツの川崎さんは、ロールモデルとして語っていただく役割でお願いしたのですが、ファシリテータとしても抜群でした。小川さんも、明るく快活な全体進行をしつつ、子どもたちをどんどんほめます。おふたりとも、子どもの気持ちに寄り沿い、やる気を引き出してくれました。母語できるファシリテータは重要です。

この兄妹のことが、ずっと心にかかっていました。
母語のみになっている他の子たちは、岩田小学校へ通っているので、学校では日本語を使っているし、仲良しの同級生がいて、まだなんとかなります。しかし、この兄妹は学校もブラジル人学校なので(妹さんの進路は未定)兄妹で閉じてしまいがちですし、日本語を使う機会もほとんど無くて、はたしてどうやって日本語に親しんでもらおうかと。それが、小川さんや川崎さんのおかげで、日本語で書きたい気持ちと弾ける笑顔が引き出され、できた喜びに満ち溢れていました。ほんとによかった、私も嬉しい!

デジタル・ストーリーテリング「メディア・コンテ」(名古屋大学小川研主催)は、今年度あと2回開催の予定です。
定例ピッケの次回は9月23日(月曜、祝日)、午前は西部住宅、午後は岩田住宅です。

中学・高校世代向けチャレンジドICTスキルアップ夏期講習会@プロップ・ステーション


7月31日から8月7日までの土日を除く6日間、「中学・高校世代向けチャレンジドICTスキルアップ夏期講習会」(主催:神戸市、事業実施:社会福祉法人プロップ・ステーション)が開催されました。ICTを活用して障害のある方の就労支援をすることが目的です。「ピッケのつくるプレゼンテーション」を使った6日間のカリキュラムを作成し、講師を務めました(途中2日は代講)。

プロップ・ステーションは、竹中ナミさん(ナミねぇ)が設立された社会福祉法人です。障がいのある人を福祉の対象とみる施策や風潮を疑問に思い、意欲をもつ人がチャンスを得て社会を「支える側」に回れる世の中にしようと設立されました。ICTを活用して、チャレンジドの自立と社会参画、とくに就労の促進や雇用の創出を目的に活動されています。これからの時代はICTが重要になると先駆けて気付き(1991年に!)、実現には社会システムの構築が肝要と考え、産・官・学・民・メディアを巻き込みながら、長年続けてこられたナミねぇのパワー、愛、才覚 ほんとにスゴイです。実は、1991年は私にとっても転機の年。パソコン(AMIGA)で始めた3DCGが面白すぎて、脱サラして本格的に3DCG修行を始めた年なのです。ナミねぇとは、その10年後、プロップ・ステーションが入居する同じビルに小さな事務所を開いた2001年に出会いました。以来、微力ながら、ごくたまにですがお手伝いさせて頂いています。

初日。はじめての場所、はじめての人の中で、皆さぞ緊張していることでしょう。まずは、おはなし絵カードを使った自己紹介で、呼んでほしい名前(ニックネーム)を、ひとりずつ言ってもらいました。いちど声を出すことで緊張を和らげる目的も兼ねています。
次に、パソコン上で自己紹介として一場面をつくります。バスケを3年やってきたという男子生徒は、ダンクシュートをきめているところを描きました。キーボードで名前も入力。パソコンが初めてという生徒さんも、操作を覚えどんどんつくっています。画面上で発表したあと、小さく出力して2日目以降の名札にしました。

2日目は、初日の自己紹介で描いた現在の自分の好きなことや得意なことから発展させて、未来へ、自身の将来へと想いを馳せてもらいました。絵で4ページを目安につくります。3日目は、文章を入れて、題名のページを作成。土日のお休みをはさんで、4日目は、仲間からのアドバイスも参考にブラッシュアップ、メッセージページも追加しました。5日目は製本と予備日、最終日は発表です。

ソフトには録音機能もあるのですが、今回のテーマを考えると、「上映会」よりも、自身の声で発表するのがふさわしいと考え、録音は無しとしました。お母さん、妹やお兄ちゃんも見守る中、前へ出てきて発表。要所はポインターで指し示しながら、しっかり伝えます。

放課後デイサービスの先生、洋服のデザイナー、漫画家、ゲームクリエイター、金メダリスト、魚屋さん(釣ってきて料理もする)、電車をキレイにする人、警官、トリマー、カフェ経営、就きたい職業は様々です。
職業ではなく、どんな暮らしをしたいか、例えば、ひとり暮らしをしたい、本のたくさんある生活をしたい、を描いたり。お金を使い切ってしまい労働をしてたくさん稼いで良い暮らしをする、をユーモラスなストーリーにした作品もありました。
どんな人(心)になりたいかを物語にした子もいました。老人に席をゆずってあげられる人になりたいと。
2017年6月5日のカタールと中東諸国の国交断絶で、カタール航空の飛行機が突然飛ばなくなったことが衝撃の記憶として刻まれていて、それを克明に描く作品もありました。

製本した絵本は、お母さんへ贈呈しました。

みんな実に堂々として立派でした。どの発表にも、心からの賞賛の拍手が送られました。
生徒さんたちのこの豊かな発想や素晴らしい力が(従来の方法では)うまく外へ表せないために、知られず、活かされないのは、社会にとってもモッタイナイとつくづく感じます。
絵が得意、文章が得意、ユーモアがある、センスがある、人や事柄への眼差しが優しい、根気強い、エネルギーにあふれてる、それぞれに良い持ち味があります。そこを伸ばしましょう。就労も、既存組織への「就職」ばかりではなく、自身のニッチな得意を活かし、新しい仕事をつくる道もあります。ユニークであることは、これからの時代において強みです。
ご参加くださった生徒さんたちが、ICTを味方につけ、自分の得意を伸ばし、本領発揮して存分に羽ばたくことを願っています。

久元市長も駆けつけてくださり、皆で記念撮影。

「チャレンジド」とは、「障害のある人」を表す新しい米語「the Challenged」を語源とした、プロップ・ステーションが提唱する呼称です。障がいをマイナスとのみ捉えるのでなく、障がいを持つがゆえに体験する様々な事象を自分自身や社会のためにポジティブに生かしていこうという想いが込められています。

ナミねぇのブログでも紹介 >>「ナミねぇのブログ」
新聞記事はこちら>>
社会福祉法人 プロップ・ステーション >>Webサイト

----------------
● 講座で利用したソフト: 「ピッケのつくるプレゼンテーション」
※ 学校向けWindowsソフトです。
● 類似のiPadアプリ: 「ピッケのつくるえほん for iPad 」
※ 個人でも学校でも App Store からダウンロードしてご利用いただけます(600円)。
● 最初のピッケ(Web):「ピッケのおうち」
※ マウス操作のパソコンでのみピッケと遊べます(無料)。プリンタ出力で楽しめる工作コーナーもあります。20年近く前につくったもので、iPadやスマホ上では動作しません。
● ピッケに関するお知らせやレポート:  Facebookページ「ピッケ」
----------------

きょうだい児さんたちとピッケ@チャイルド・ケモ・ハウス


チャイルド・ケモ・ハウス(愛称:チャイケモ)さんと小児病院を訪問する「おでかけピッケ」、スタートから6年あまりが経ちました。院内学級で実施の際は、初等部や中等部の子どもたちが対象となります。一方、京大病院や大阪府母子センターなどのプレイルームへ出かけると、小さい子どもたちに混じって、付添いのお母さんたちが、家で待つきょうだい児(闘病中の子どもたちの兄弟姉妹)のために夢中で絵本をつくる姿によく出会います。

8月3日土曜日、チャイケモで、きょうだい児対象の絵本づくりワークショップをしてきました。週末の一時滞在でご家族と一緒にハウスで過ごす患児さんも、体調をみながら参加してくれました。

ハウス中央に位置する広いプレイルームでは、きょうだい児さんお父さんお母さんたちが、絵本づくりを楽しまれました。ご家族ごとの小さな輪が、自然に生まれます。
感染が心配な患児さんは、それぞれハウス内の別のスペースで。チャイケモ職員の自立支援員さん、保育士さん、看護師さんに加え、ボランティアの皆さんも入ってくださったおかげで、万全の布陣でのぞめました。

プレイルームから見上げる大きな天窓には涼しげな水面のディスプレイ。夜は神戸の花火大会でした。

できあがった絵本を、それぞれの大切な兄弟姉妹や家族へ届けることができますように。

チャイケモのFacebookページ>>