Category: 講演・講義・学会・論文

「アートとこころのケア講座」でピッケ



今年度も「アートとこころのケア講座」(於:兵庫県こころのケアセンター)で講師を務めました。今年で5回目です。この講座では「病児や発達に困りごとのある子どもたちのサポート」に絞ってお話ししています。

体験時間には、お話づくりの楽しみを思い出してもらいたくて、5歳の頃にワープ。幼い頃のできごと、思い出す場所や人、言葉等をお話にしてもらいました。園の先生に手紙を書いたらお返事をくれた、ピアノが届いた嬉しい日、デパートへ出かけた(大食堂、屋上遊具)。皆さんが語るお話に、私も忘れかけていたなつかしい光景が蘇りました。(写真右上はデパートの屋上風景)

療育や医療的ケアの領域では特に、ナラティブモードの語りが助けになります。その際、インタビューなど言語のみだと向き合う二項関係になりますが、メディアを介することで三項関係となります。セラピストとクライアント、親と子ども、教員と児童生徒といった二項関係においては、前者にそのつもりがなくとも後者にとっては圧を感じてしまう場合があります。対して、両者が横並びとなる三項関係ではドミナントが弱まり、後者がリラックスしやすくなります。また、デジタルメディアであれば、文字のみによらず、絵や音声も総動員しての表現ができるので自由度があがり、これまでの手法では表出の難しかった思いを伝えることができます。インタラクティブに操作しながらの発話は物語の中に入っていきやすいです。全員に有効ではないかもしれませんが、良くデザインされたデジタルメディアは、発達に困りごとのある子どもたちの創造表現を助けます。

受講くださった内の何人かでも、デジタルメディアを介したお話づくりの可能性を感じ、ご自身が携わるお仕事や活動あるいは家庭へ持ち帰り活かしてくださる方があると嬉しいです。

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美大でゲスト講義


12月19日、嵯峨美術大学(内田隆寿先生)でゲスト講義の2回目でした(全2回)。頂いたお題は「社会教育」。家庭、学校や園、地域の3つが緩やかにつながった社会全体で子どもを育む、教育は次世代へのギフト(贈与)、広い視野で視線は遠くへ、という話をしました。リアクションペーパーを読むと、届いたと伝わってきて嬉しいです。

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美大でゲスト講義


12月19日、嵯峨美術大学(内田隆寿先生)でゲスト講義の初回でした(全2回)。頂いたお題「社会教育」の切り口で。美大ですし受講者に教育方面へ進む学生さんはいないとのことで、自己紹介のところにピッケ以前を含めて、大昔につくった3DCGanimeも入れてみました。授業後まで残った学生さんが、CGやアプリ開発の言語、将来の進路など色々話してくれて「来週も楽しみです」と言ってくれて、私も楽しみです。

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大学でゲスト講義


愛知淑徳大学 福祉貢献学部(井上知香先生)でゲスト講義を担当しました。
この春から保育士になる4年生対象とお聞きしていたので、幼児教育の事例紹介をメインとし「デジタルを『創る』に、なかでも言葉の『創る』に使いましょう」というお話をしました。30分ほど設けた体験時間で学生さんたちがつくったのは、雨の日が楽しみになるお話、眠りにつく前に「ねえねえ、きょうね」と楽しかった一日をふりかえるお話、保育実習で出会った眼鏡を嫌がる男の子のためにつくったお話など。子どもへ向ける眼差しがあたたかく発想もやわらかです。

後半では、外国ルーツの子どもたちの現状や課題について伝えました。在留外国人数全体でみると東京都が最多ですが、「日本語指導が必要な外国籍の子ども」となると愛知県が飛び抜けての1位で、2位の神奈川の2倍にものぼります。グラフを示すと、ほぼ全員が「知らなかった」と驚いていました。そうなる理由は、東京は単身で来日する外国人が多いのに対し、愛知は家族を伴っての来日が多いためです。日本で生まれ育っていても家庭では母語のみで、小学校就学ではじめて日本語を使う場合も多く、母語・日本語ともが中途半端となりがちです。そのため本領を発揮できずにいる子どもたちも多いのです。就職なさる園で外国籍の子どもと接する学生さんもおそらくあることでしょう。

井上知香さんと保育や幼児教育におけるデジタルの使いどころやあれこれを、ゆっくり話せたのも有意義で、またご一緒するのが楽しみです。

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女子大でゲスト講義


鎌倉女子大学で2日間に渡りゲスト講義でした。まず10月31日は「建学の精神実践講座」という畏れ多い枠での2年生の講座。11月2日は児童学科の1年生(梨本加菜先生)。両日とも、将来は幼稚園教諭、保育士、小学校教諭を目指す学生さんたちが対象です。「創る」なかでも言葉の「創る」である「お話づくり」を幼少期に楽しい活動として届けましょう、そこにICTを使いましょう、というお話をし、短い時間でしたが絵本づくりも体験してもらいました。

児童学科1年生の受講後のコメントが届きました。「デジタルは子どもに悪影響を及ぼすと思っていた」「自分の子どもにも使わせないつもりだった」や「デジタル反対派だった」という複数人の学生さんたちが、受講して考えが変わった、デジタルを言葉の創るに使ってみたいと書いてくれています。担当した甲斐がありました。

講義後は、鎌倉をご案内頂きました。手配してくださったタクシーで鶴岡ミュージアム大河ドラマ館へ駆け込み、続いて、すっかり日が落ちた細路を辿り、足元を懐中電灯で照らして頂きながら石段を登って法華堂跡(北条義時のお墓)へ。暗闇にARで浮かび上がらせた今はなき御堂を探訪しました。空に三日月、かすかな虫の音の静寂、背後に何かの気配もあり、中世へとワープしそう。「鎌倉殿の13人」ファンの私はワクワクし通しでした。

キャンパス内には里山やビオトープが在り、澄みきった空に鳥の声が響いて一瞬どこにいるのか忘れます。この日は会えませんでしたがリスもいるそうです。

昔、大学のキャラクター「みどりさん」をデザインおよび制作したことがあり、その時も、リスの「ミラクル」を相棒に配したのです。そんな御縁ある鎌倉女子大学で講義をさせて頂けて幸せでした。

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特別セミナーで講師


10月30日は、子どもたちが科学のものがたりを創作する場づくりを研究なさっている科研グループの皆さん主催で特別セミナーでした。会場はお茶の水女子大学国際交流プラザ。「デジタルを活用した子どもの創作活動支援とは?」というお題を頂き、2時間ピッケの講話+30分ディスカッションをハイブリッド形式で。

文京区教育センターでの科学絵本づくり講座でピッケを活用なさっているとお聞きしたのは3年前。今年8月にようやく見学、導入や進行の方法に感心しました。科学絵本づくり講座に連続参加している男児の保護者さんから「科学絵本のワークショップに参加して子どもの日常が変わった。やってみる!と言うようになった。『快』の経験が子どもをこんなに変えるのだと驚きました」と伝えられたそうです。それを私に伝えて下さるお気持ちも嬉しいです。

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2つの大学でゲスト講義


ゲスト講義で2年ぶりに上京しました。東京は酷暑、5限を終え18時を過ぎても息苦しいほどでした。

6月29日は相模女子大学 子ども教育学科(七海陽先生)へ。将来、保育士や幼稚園教諭になる学生さんたちが対象です。「ピッケのつくるえほん」iPad版リリース当初から10年に渡り授業の中で絵本づくりをなさっていて、私のゲスト講義担当も5年余となります。オンライン授業となった昨年度はそれぞれ自宅等からの受講ゆえ講話のみとしましたが、対面の今年度は、90人が2人1台で使えるよう機材、アプリとも万全に整えてくださっていて体験もできました。
講義の前半では、ICTの使いどころ、子どもの物語世界を拡げていく活動のデザインや、芦屋市での導入と現場の先生方による活用について伝えました。学生さんたちには、ICTも適所に使いつつ、子どもたちが夢中になる創る「遊び」をデザインできる人になってほしいです。

7月1日は青山学院大学 教育人間科学部(杉本卓先生)へ。こちらは一般企業へ就職なさる学生さんたちなので、活動事例は社会課題に関わる2件、外国籍の子どもたち対象と病児訪問のコロナ禍での対応に絞って話しました。ともない、子どもの人権についても触れました。教育を受ける権利について憲法で規定されていますが、解釈や判例によって「日本国籍を有する国民」に限定していて外国人の子どもに就学義務はありません。そのため外国人の子どもたちへの教育は、各地方自治体の対応に任せられているのが現状です。これに対し 国際条約の「子どもの権利条約」では、全ての子どもが人種や国籍などいかなる理由でも差別されず、医療、教育、生活への支援などの権利が保障されています。1989年に国連で全会一致で採択され、翌年国際条約として発効、日本も1994年に批准しました。国際条約は憲法より下位ですが法律より優位の法的効力をもちます。ですから本来であれば、法令や行政等は、条約に沿って解釈・運用されなければなりません。批准から28年を経てようやく、今年4月に子どもの権利に関する国内法をつくる議論が国会で始まりました。こども家庭庁の先行きも気になるところです。子どもの養育や教育は家庭のみ学校のみにその責を負わせるのではなく、社会全体で担うものです。
学生さんたちへは、職業としては直接たずさわらないにしても、子どもが幸せに生きる社会を共につくりましょう。という話をしました。

両校ともZoomでもOKと言って頂いたのですが出かけてよかったです。どちらの学校も学生さんたちが朗らか和やかで嬉しくなりました。画面越しの1対多で話す時とは私の側も自ずと違ってきます。事前に大枠は用意するけれど実際に何を話すかは、場や聴き手によって引き出されるので。七海さんや杉本さんと久しぶりにお話できたのも楽しく有意義でした。

キャンパスの並木って良いですね。左が相模女子大、右が青学大。

6月22日交付の「こども基本法(令和4年法律第77号)」を見ると「全ての子ども」とまたしても曖昧になっています。今度こそ国際条約に準拠するなら、国際条約と同様に「子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されない」を明記してほしい。「児童の権利に関する条約の精神にのっとり」とはあるので、正しい解釈、運用を期待します。「こども基本法」(内閣官房Web)

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オンラインでゲスト講義


愛知淑徳大学 人間情報学部(佐藤朝美先生)でゲスト講義を担当しました。お招き頂くのは5回目。昨年度に続きオンラインでの授業となりました。

これまでの授業でスクラッチもしていて、来年の卒業時には論文だけでなくアプリやWeb制作を手がける場合もあるとのことで、アプリ開発話をふくめた講話をメインにしました。言葉の大切さとデザインについて。アプリをデザインするには、まず先に実現したい情景があって、そこへ向かう工程の適所にICTを配すること。アプリ側が過剰にやり過ぎないこと。活動をデザインする際に心がける留意点としては、「廃材工作×お話づくり」を例に、「お話を聴く→廃材でつくる→お話をつくる」一連の流れをシームレスに、子どもの中で膨らんでいく物語世界を損なわぬように、丁寧に「場」を用意し見守ると話しました。アプリのデザイン、活動のデザインどちらにおいても考え方の基本にあるのは、子どもの生来の力を信じ、それを伸ばすための支援をするという姿勢です。また、世界を見渡せば、自然災害、パンデミック、侵略戦争など喫緊の課題が山積していて、私たちはその渦中に生きています。皆さんが将来どんな道へ進み何を創り生み出すとしても、社会課題と無関係ではいられないと伝えました。私も今まさに痛感しており、自身の課題でもあります。

お話づくり体験はUIデザインを試してもらう程度のごく短時間であったのに、全8チームが仕上げていて驚きました。それだけに見て回れないのがなんとももどかしくて。来年は対面で行けますように!


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教育短大で講義


先週から週3日×2週間、客員教授を務める神戸教育短期大学へ出かけていました。
学生の大半が長期履修制度(3年制)を選んでいて、担当したのはその2年生、将来、保育士や幼稚園教諭になる皆さんが対象の授業です。

講義のねらいは「子どもたちが言葉の楽しみに浸れる楽しい『創る』活動をデザインできる」としました。子どもたちに、従来の読んでもらう楽しみに加えて、自分でお話をつくり語る楽しみを届けてほしいのです。体験では、ひとり1台環境で実際につくり、録音もしてデジタル絵本を完成させました。

落ち着く場所をみつけ、ひとりで、あるいは仲間と役を割り振って録音。

例えば同じ花火の場面でも、サッと検索してぴったりなフリー音源を探してくる学生さんがいる一方、「ひゅるるるる~」「ドカーン」と複数人によるオノマトペで効果音とするグループもあって、それぞれの工夫が楽しいです。壮大な楽曲を即興演奏して録音する強者もいて、学生さんたちのアイディアと瞬発力につくづく感心しました。

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「アートとこころのケア講座」でピッケ



 今年度も「兵庫県アートとこころのケア講座」(於:兵庫県こころのケアセンター)で講師を務めました。今年で4回目です。この講座では「病児や発達に困りごとのある子どもたちのサポート」に絞ってお話ししています。

 概要のあと、まずご自身でお話づくりの楽しみと可能性を感じてほしくて、実際につくってもらいました。これまで過去3回では4~5人のグループ制作としていましたが、感染リスク低減のため今回はおひとりまたはおふたりでの制作としました。

 講座後半では、発達に困りごとのある子どもたち対象、入院中の子どもたち対象の事例について、場づくりにおける留意点等も含めてお伝えし、子どもたちの動きや発言、作品について解説しました。事前にお送り頂いた情報(名前など個人情報のない属性のみのデータ)を見ると、介護士等福祉職に携る参加者が数名いらしたので、シニア対象の事例もひとつ入れました。

 ASD児など発達に困りごとのある子どもたちにとっては、人や社会と接続するための言葉による表現が、皆と同じを強いられる従来の方法では難しい場合があります。一方、彼らの内側にある言葉は、むしろ豊かに育っています。その豊かな言葉を聞けないのは、本人が困ったりもどかしく思うのはもちろんのこと、社会にとっても、とても残念で、もったいないです。誰もが自分に合った方法で表現できるよう、変わるべきは社会の側です。

 あわせて、ブルーナーの唱える語りの2つの様式、論理科学的モードとナラティブモードについてと、関連して三項関係の話もしました。療育や医療的ケアでナラティブ法をとる際、インタビューなど言語のみだと向き合う二項関係になりますが、メディアを介することで三項関係となります。セラピストとクライアント、親と子ども、教員と児童生徒。いずれにおいても、前者にそのつもりがなくとも後者にとっては圧を感じてしまう場合があるのです。両者が横並びとなる三項関係では二項関係に比べドミナントが弱まり、後者がリラックスしやすくなります。
 また、デジタルメディアを活用すると、文字のみによらず、絵や音声も総動員しての表現ができるので自由度があがり、これまでの手法では表出の難しかった思いを伝えることができます。インタラクティブに操作しながらの発話は物語の中に入っていきやすいです。全員に有効ではないかもしれませんが、良くデザインされたデジタルメディアは、発達に困りごとのある子どもたちの創造表現を助けます。

 言葉の喜びや楽しみは、子どもたちが生きていく上での大きな力となります。社会の中で不自由を感じている子どもたちには尚さら、言葉と物語の深い喜びを味わい、本領を発揮して、幸せに生きてほしいと願います。

 新型コロナ感染下での生活が2年にもおよび、きっとどなたにも、気持ちの曇る日があることでしょう。そんな思いもあって、今回は特に丁寧に準備しました。「ピッケのおうち」が終了したので、お見せできるものは減ってしまったのだけれど、受講くださる方に「届ける」気持ちで。

 終了後「この時間に癒されました」と伝えてくださる方がありました。残って、おはなし絵カードやおはなしマグネットを手にとり興味を示してくださる方も多々あり、準備の甲斐がありました。もし何かしら届いたものがあったなら、それを次の誰かへ届けて頂けると嬉しいです。ナラティブモードの語りをご自身の場に持ち帰り、試して下さる方がありますように。

 講話の中で紹介したいくつかの事例は、このブログにも書き残しています。カテゴリーで選ぶと探しやすいです。
Category:「小児医療」
Category:「発達障害・特別支援(チャレンジド)」

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