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未来の図書館「ピッケのつくるえほん」ワークショップ @デジタルえほんミュージアム


15日(月・祝)未来の図書館について考えるワークショップを、新宿区立中町図書館、ドットDNPさんとのコラボで行いました。
会場は、中町図書館から徒歩圏のデジタルえほんミュージアム。
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図書館は、個人的にも関心あるテーマで、このお話をいただいた時はちょうど、菅谷明子さんの「未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告―」を再読中でした。(10年以上前に書かれた本なのですが、今読んでもちっとも古くなくて面白いです)
そんなわけで大いにはりきったものの、いきなり 「さぁ今日は未来の図書館をテーマに絵本を作りましょう!」というわけにはもちろんいかず、いつものワークショップの時間にプラスして、導入の時間と考える時間をとる必要があります。お願いして、当初の計画より30分余分に時間を頂戴することにして、それでも2時間半。デジタル絵本と紙の絵本の両方をつくり発表会もというリクエストなので、かなりシビアに時間配分を考えねばなりません。そして、大きく漠然としたテーマを、もう少しイメージしやすいよう、子どもの生活に近いところから考え始められるものにしたい。かといって、現実的になりすぎても面白くないし。さて、どうしよう。資料を集め、構成を考えるのは、とても楽しい時間でした。

未来を考えるとき、まずは現在、そして過去について知ること。「起源」は大事です。
参加は、小学4~6年生(最終的には3年生がひとり混じりました)新宿区立の小学校在籍で、大半が中町図書館の地区の子どもたち。日頃から親しみある中町図書館の、でも会ったことはない鹿島館長から、図書館の日頃の業務や、世界/日本の図書館の歴史、図書館の役割について、最初にお話いただくことにしました。たった5分の中に、歴史にも触れてほしいという無理をお願いしましたが、中町図書館内の写真などを使いながらわかりやすく紹介してくださいました。
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続いて、私から世界のいろんな図書館を紹介。これも5分なので、イメージを広げやすいビジュアルあるもので繋げました。
・立地がユニーク(ツリーハウスイベントでの図書館、海底ホテル内の図書室)
・町の中のマイクロ図書館ネットワーク(little free library
・動く図書館(コロンビアのロバの図書館、オランダのBieb Bus、タイの水上図書館など)
・紙の本が無い図書館も(digital book mobile
・図書館ではないけれど、デジタルになることでプラットフォームが自由になる例(チームラボ×ダイキン工業 雲プロジェクト
・自分たちの町の図書館を、皆でアイデアを出し合ってつくる(愛知県豊橋市)

それから、アイディアシートに各自で書いてもらい、グループ内で発表。互いの質問やアドバイスをうけてブラッシュアップ。
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参加者の募集も、3人ずつのグループに分けることも、図書館の方がしてくださいました。兄弟姉妹や友だちで参加のペアはそれぞれ別のグループに分かれて、学校も違う「はじめまして」どおしのグループになりました。
3年生女児と6年生男児、すっかり仲良しになっていました。
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次に、「伝えるためにアイディアを物語にする」を考えるヒントに、絵本を紹介。モニカ・ブラウン作「こないかな、ロバのとしょかん
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書画カメラで映しながらあらすじを話したあと「この絵本は、最初にムービーで見てもらった コロンビアの小学校の先生ルイスさんのお話です」と種明かし。(途中で気づいていた子もいました)
この絵本では、ロバの図書館がやってくるのを心待ちにしている 本好きな女の子アナ側から見たお話として描かれていますが、もしアナの視点ではなく、ルイスさんの視点、2頭のロバ、アルファとベットの視点、あるいは、ルイスさんがやってくると その木陰がひととき図書館になる樹の視点など、他の視点から描くと同じ話がどう変わるかを想像してもらいました。(実際、市販されている絵本には、ルイスさん側から描いた1冊もあります)
「皆のアイディアを一番よく伝えるには、誰の視点からのどんな物語にするとより伝わるでしょう」と投げかけると、子どもたちの表情がパッと考える顔つきに変わるのがわかりました。で、そこで時間をとってあげられればよいのですが、進行の都合上無理なので、アプリの使い方の練習しながらのマルチタスクをお願い。子どもたち、ちゃんと付いてきてくれました。

ここからはiPadを使って、まず絵だけで4見開き。次に表紙と裏表紙を作成。アイディアの特徴を伝える絵本の題名も考えます。
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早く終わった人のみ本文に文字を入力。それから録音。
居心地よい場所を見つけて、それぞれで録音中。
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録音内容を綿密に書く子もいます。
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続いて、紙の絵本を製本。
進捗に差がついてしまったので、揃うのを待つと発表会はあまり時間がとれなくて、かなりの駆け足になってしまいました。
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鹿島館長から講評をいただき、ふりかえりをしてお開き。
子どもたちの作品から、いくつか紹介しますね。

6年生男児「本が読みたい」——————
場所:飛こう機の中
ひと:飛こう機でほかのところへいく人
特徴:シートベルトが消えているときだけ利用でき、きんきゅうのときのために いすにはシートベルトがついている(食べ物は食べれない)
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5年生女児「大きな木のある小さな図書館」——————
場所:森の中の大きな木の中
ひと:子どもからおとしよりまで→ペットも!
こと:本の貸しかり、カフェ、マッサージ(チェア)、おかし(お茶会)、ねる
特徴:真ん中に木、木でできた図書館、上(天じょう)ガラス、人工しば
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3年生女児「海の中の図書館」——————
場所:海の中
ひと:ダイバーとかもぐってくる人
こと:本をよんで自動でのみものとかたべものとかがでてくる
特徴:海の中をおよぎながら本をよめる
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5年生男児「土の中の図書館」——————
場所:地下(土の中)
ひと:人・動物
こと:本の貸し出し 土の中を見たり どこにあるかわからなくなる(たまに動く)
   入る時は、どこかに穴があり、そこからすべって入る。
   午後1時から午前3時まで
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5年生女児「いつでも、どこでも!想像で行ける図書館」——–
場所:みんなの頭の中
ひと:だれでもこれる(動物も!)
こと:だれかが頭の中で「いきたいな…」と思ったときにこれる。
   好きな本を選んでプレートにおくと かりることができる。
   本は(こんな本が借りたい)と思うと、それに関連した本が たなにでてくる。
特徴:電子本もある。動物の大きさ、高させいげんは10kg以内と1.5m以内。
   その図書館に来ても、1人だけだということは絶対にないのでさびしくならない!!!
   物 かえす期げんをすぎると その人のなにかをうばわれる
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「土の中の図書館」作者の5年生男児は、録音が照れくさくて、上映の時点では表紙以外は無音でした。ほんとは音も入れたかったのではと思い、終了後に声をかけてみたところ、残って最後まで仕上げてくれました。嬉しいことに、アンケートの感想に「すごくたのしかった」、図書館でこれからしたいことは「自分の本をいっぱいつくる」と書いてくれていました。

今回は、①未来の図書館のアイディア出し、②そのアイディアを物語に変換する、という大きな2つの山を入れねばならず、2時間半では無謀かも、という懸念もありました。でもいつも、子どもたちの柔軟性、発想、創造力はこちらの予想を上回るので、ワークショップの回数を重ねるほど、そこは子どもたちなんとかしてくれるだろうと思えるようになり、実際、今回も期待以上に応えてくれました。

ピッケの絵本づくりワークショップでしたいことは、3つあります。
1)言葉や物語の楽しさや喜びを味わう。
2)自分のつくったお話を語り聴いてもらう楽しさを知る。それは、自分を認めること、人を信じることにつながる。
3)つくる側になる。衣食住どれにおいても消費者であることが多い子どもたちに、いつだってつくる側に回っていいんだと感じてほしい。

たまにご父兄から、お話の作り方、起承転結などの指導がほしかったなどの声もあるのですが、たった2時間ほどの中、まずお話づくりの楽しさを味わうことを優先しています。楽しければ、もっと良くしたくて、勝手に友だちの作品から学び、工夫する、自走式になります。正統な手法や文法の習得よりも、むしろ、実は創造も表現も得意なのに、正しい文法が使えなかったり規定枠に合せることが難しいため学校で低い評価を受け自分でも低く自己評価してしまっている子どもにこそ、本来の力を自由に発揮してほしいのです。

「未来の図書館」テーマの今回特にしたかったのは、上記の1)~3)に加え3)をさらに発展させ、図書館など社会のインフラも、与えられた箱を使うだけではなくて、自分たちでアイディアを出して自分たちでつくっていくと感じてほしいということでした。
当初は支配者層や知識階級のものであった図書館が、欧米でも160年ほど前、日本ではたかだか60年ほど前にようやく市民誰にでも開かれた場になったことを知り、その連なりの先に、次は自分たちが作っていくのだと楽しみに思ってくれたらいいなと。

準備も当日も、今こうして子どもたちの作品を振り返ることも、ほんとに楽しいワークショップでした。鹿島館長をはじめ図書館の皆さん、毎回お世話になるドットDNPの皆さん、参加してくれた子どもたち、ありがとうございました!

写真を、Facebookページ「PeKay」でご覧いただけます。
DNPさん(プロのカメラマンさん)撮影の写真はコチラです。
みらいドットDNPさん公式レポート「未来の図書館は土の中!?」