Collable、CAMP、ピッケ(グッド・グリーフ) の3団体協働での障害のある子もない子も一緒に学ぶ場作りのプロジェクト、第4回目を実施しました。
12月7日日曜日、快晴。まずは、設営とスタッフミーティングからスタート。
いつも来てくださる社会人ボランティアの松村昂明さん、水谷大さんは、どの役割も安心してお任せできます。初参加の大学生ボランティア3人、大城美空さん、木間大貴さん、荒木葉織さんも、設営からすでによく動いてくれます。(ワークの制作中は、子どもの人数に対して大人が多すぎると良くないので、中に入るのは順番にひとりずつとしてもらいました。ちょっと申し訳なかったですが、快く応じてくれてありがとう。)
流れや役割分担を確認、Collable山田小百合さんがまとめてくれたニーズのある子どもたちへの留意点を皆で共有して、準備完了。さぁ、あとは子どもたちを待つばかり。
輪になって自己紹介のあと、今回のメインファシリテータの中村公美さんから「今日すること」の説明。見通しが立つことは大事で、安心に繋がります。
おはなしづくりに入る助走的な活動として、2チームに分かれて、カードを引きお話を繋げていく遊び。
できあがったお話をチーム全員で読み上げて発表する頃には、初参加の子どもたちも表情が柔らかになっています。
いつも冒頭で何かしら絵本の話をしています。今回は、エズラ・ジャック・キーツさんの「ゆきのひ」と、同じピーターシリーズの「ピーターのいす」「ピーターのくちぶえ」の3冊にしました。
制作に入る前に、贈る相手を決めてもらいます。小3男の子は「病気のおじいちゃん」と即答、さいごまでぶれませんでした。
4見開きを作り、表紙裏表紙もつくります。
録った音を確認しています。1年生。
出力した展開図から製本します。
発表会では、ひとりひとり、発表シートを手に前へ出てきて、贈る相手や気に入ったところ/工夫したところを発表します。
時間を超過してしまったので、鑑賞会(ポストイットに感想を書いて皆の作品に貼る)はあきらめて、ふりかえりをしておしまい。
このプロジェクトは、様々な発達状態にある子どもたちが一緒に混じっての活動です。
ふるまいなどからひとりで閉じこもることを好むと思われる場合がありますが、必ずしもそうではなく、コミュニケーションをとりたいけれど、単にそのアクセスがうまくいかないだけなのではと感じる場面が多々あります。そして、本人が一番それをもどかしく思い困っているように感じます。
彼らはとてもよく周りを観察しています。記憶力も抜群。人の気持ちの読取りが苦手と一般に言われますが、友だちを気遣い、繊細で優しいです。
ただ、知らない慣れていない人からの視線は辛いだろうと思うので、私たちも、ベッタリでなく、かまい過ぎず、ときどきサラッと声がけをして、いつでも入ってきやすいようにと心がけています。
参加3回目のTくんは、参加初回の6月には、通りがかったファシリテータの手をつかんで要望を伝えることが多かったのですが、今回は「タミエさん、(バスケットの)ゴールってどうするんですか?」と、席を立ってやってきて言葉で質問してくれました。こちらから伝えるのも言葉でできました。(見に行くと、教えるまでもなく自分で積木を組合わせてできていて、ひとめでバスケットゴールとわかりました)
そして、おはなしも一番早くにできあがり、次に何をするかもよくわかっていて「表紙をつくっていいですか」と聞いてきます。「皆で一緒に始めるから待ってね」と言うと、わかってくれて、廊下で制作中の友だちの様子を見に行ったり、お母さんに途中経過を見せたりしながら待ちました。その表紙もすぐにできあがって「録音をしてもいいですか」。3ヶ月も前のことを実によく覚えています。
Tくんの作品を紹介しますね。
「ピッケとまあくんがたいへんなことになった」
ピッケとまあくんがシュートにきまりました(ピッケとまあくんのシュートがきまりました)
みみちゃんとうっきーは泣いてしまいました
「ピッケとまあくんが居ない!? どうしよう」
「俺の本物をタッチしろ」
「俺様の本物をさわってみろ」
「ピッケとまあくんが居なくなったり、いっぱいになっちゃうんだ」
かえるくんとおたまちゃんが「大変じゃないか」
実は、2見開き目の白い卵の裏には、それぞれに、ちゃんとピッケとまあくんが隠れています。(はみださずに上手く隠れるよう、両腕を下げてあります)
Tくんとしては、この卵の存在には気づいてほしくないのです。見なかったことにして、読み手にも「あ、ピッケとまあくんが居ない、消えちゃった!?」と驚いてほしい。そうであるなら、もし大人なら、ピッケもまあくんもそれらを隠す2つの卵も置かずに、びっくりしているみみちゃんとうっきーだけにして表現するところですよね。でも、それでは違うのです。ピッケとまあくんは確かにそこに「居る」のだけれど「見えない」としたい。白い卵は、透明マント的なアイディアなのですね。
続く3見開き目では、分身の術のように複数体になります。「本物はいるの?」と尋ねると「居る」。2つハズしたあとに「本物を教えて」と言うと、それは内緒とのこと。
「透明」「分身」という思いついたアイディアが自分で気に入って、最初のバスケットボールという設定は薄れてしまっていますが、でも、それくらい面白いアイディアですよね。
題名も「ピッケとまあくんがたいへんなことになった」と、Tくんにとっていちばん大事なことが楽しい題名になりました。
発表会でこのお話が上映されたとき、これらのアイディアを皆にお披露目したかったのですが、観た人が「消えた!?」と騙されるほうがTくんにとっては嬉しいわけで、私の口から言うわけにはいきません。子どもたちからの質問で「後ろの白い卵は何ですか」が出て、種明かしとなりました。皆はアイディアに感心したけれど、Tくんは、ちぇーっと思ったかもしれませんね。「4人の中に本物はいるのですか?」とも質問されて、やはりここでも一貫して「居る」。でも「ないしょ」と答えていました。
今回初参加の6年生の男の子。自分の胸を叩き続けたり、大きな声を出したりするのは、おそらく自分を落ち着かせるためにしています。気持ちをコントロールするために出る常同運動が個性的すぎて、大人は驚くことありますが、子どもたちは大して気にしていません。録音の時だけは静かにしてほしそうですけれど。
とはいえ、特定のファシリテータにベッタリになってしまったり、スキンシップが多すぎるときは、「それはしないでね」を静かにきっぱり告げたり、さりげなくファシリテータが交代したりしていました。CAMPの皆もCollableの皆も、その辺りのあんばいが流石です。今回は裏方に回った村田香子さん、新谷美和さん、久保田舞さんたちが連携して快適な場を整えてくれます。まるで360度に眼とアンテナがついてるんじゃないかと思うような動きです。
音に敏感で 会場内に入って来るのはむずかしい男の子は2回目の参加です。前回同様、中の様子がガラス越しに見える廊下で、お母さんに見守られて制作してくれました。今回は、始まる前に少し、制作途中にもぐるりと一周、製本の間はずっと(!)会場内に入ってきてくれました。発表会は上映の音も拍手の音も大きいので中に入ってくるのは難しいものの、発表シートもしっかり書き録音も明瞭な声でやりとげ、お母さんを通して「発表お願いします」とiPadをスタッフに託してくれたので、トリにふさわしい発表となりました。廊下はあまりに寒すぎましたね。次回はストーブか何か用意しますね。
「ツリーハウス」
木を見つけたらツリーハウスをつくろう
急に雨が降ってきた 水魚が現れた
雨が止んで虹が出てきたよ 木を探しに出かけよう
ふたりでツリーハウスをつくったよ
絵本づくりワークショップを始めて6年あまり、「ツリーハウス」のお話ははじめてです。裏表紙の夜の情景も素敵。
お母さんたちの子どもたちへの関わり方が たくましくて、優しくて、辛抱強くて、ほがらかに笑っていて、素敵です。一朝一夕でまねできるものではないけれど、見習いたいです。そして、どの子もほんとにお母さんお父さんが大好きなのだと、ひしひしと伝わってきます。
3ヶ月に1度のこのワークショップが、回を重ねるごとに、ますます楽しみになっています。個性の振れ幅が大きい子どもたちのおかげで、思いもかけない時間の捉え方や、世界をみる視点に、新しく気付かせてもらえます、あるいは、子どもの時そうだったと思いださせてもらえたり、そっちのほうがずっといいなと驚き発見します。私にとって、表現の、人としての、豊かさに触れられる貴重な時間です。
今年度は、残り1回、2/1に実施予定です。ご参加をお待ちしています!
(参加希望者が多くて毎回抽選になっています。開催の数週間前にCAMPさんのWebサイトから募集告知が出ます)
写真を、Facebookページ「PeKay」でご覧いただけます。
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