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「アートとこころのケア講座」でピッケ



今年度も「兵庫県アートとこころのケア講座」(於:兵庫県こころのケアセンター)で講師を務めました。この講座では「病児や発達に困りごとのある子どもたちのサポート」に絞ってお話ししています。

概要説明のあと、ごっこ遊びをしていた幼い日の物語る楽しみを思い出してほしくて、5歳の頃にワープ。好きだった遊びや場所、嬉しかったこと、あるいは心細かったことなど心に残っているできごとをお話にしてもらったところ、例えばこんなエピソードを語ってくださいました。
有馬の山でオニヤンマを見つけたとき、いつもは寡黙なお父さんが「よし待ってろ」と虫捕り網を手に、まるで武士の太刀捌きのような見事さで捕まえてくれたのだそう。その鮮やかな光景を描いてくれました。そのとき抱いた尊敬の気持ちとあふれる嬉しさが伝わってきます。

また別の方は、お腹が痛くなりがちな私を気遣ったお母さんが、ハチミツをかけたりの工夫をして正露丸をのませてくれたこと。それぞれの場面の背景に置いた冷蔵庫の表情も効いています。お話を聴かせてもらって、そういえば、虚弱だった私も、ビオフェルミン、正露丸、養命酒、あれこれのませてもらったなと思い出しました。幼い日に大切にしてもらった記憶は心の奥底にいつまでも残りますね。大事なお守りのように。

療育や医療的ケアの領域では特に、ナラティブモードの語りが助けになります。その際、インタビュー形式などの言語のみで向き合う二項関係と比べ、メディアを介しての三項関係がより望ましいです。セラピストとクライアント、親と子ども、教員と児童生徒といった二項関係においては、前者にそのつもりがなくとも後者にとっては圧を感じてしまう場合があります。対して、両者が横並びとなる三項関係ではドミナントが弱まり、後者がリラックスしやすくなります。また、デジタルメディアであれば、文字のみによらず、絵や音声も総動員しての表現ができるので自由度があがり、これまでの手法では表出の難しかった思いを伝えることができます。インタラクティブに操作しながらの発話は物語の中に入っていきやすいです。全員に有効ではないかもしれませんが、良くデザインされたデジタルメディアは、発達に困りごとのある子どもたちの創造表現を助けます。

受講くださった皆さんが、お話づくりの楽しみを思い出し、その可能性を感じ、ご自身が携わる場へ持ち帰って、次のどなたかへ届けてくださると嬉しいです。

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