今年度も「兵庫県アートとこころのケア講座」(於:兵庫県こころのケアセンター)で講師を務めました。今年で4回目です。この講座では「病児や発達に困りごとのある子どもたちのサポート」に絞ってお話ししています。
概要のあと、まずご自身でお話づくりの楽しみと可能性を感じてほしくて、実際につくってもらいました。これまで過去3回では4~5人のグループ制作としていましたが、感染リスク低減のため今回はおひとりまたはおふたりでの制作としました。
講座後半では、発達に困りごとのある子どもたち対象、入院中の子どもたち対象の事例について、場づくりにおける留意点等も含めてお伝えし、子どもたちの動きや発言、作品について解説しました。事前にお送り頂いた情報(名前など個人情報のない属性のみのデータ)を見ると、介護士等福祉職に携る参加者が数名いらしたので、シニア対象の事例もひとつ入れました。
ASD児など発達に困りごとのある子どもたちにとっては、人や社会と接続するための言葉による表現が、皆と同じを強いられる従来の方法では難しい場合があります。一方、彼らの内側にある言葉は、むしろ豊かに育っています。その豊かな言葉を聞けないのは、本人が困ったりもどかしく思うのはもちろんのこと、社会にとっても、とても残念で、もったいないです。誰もが自分に合った方法で表現できるよう、変わるべきは社会の側です。
あわせて、ブルーナーの唱える語りの2つの様式、論理科学的モードとナラティブモードについてと、関連して三項関係の話もしました。療育や医療的ケアでナラティブ法をとる際、インタビューなど言語のみだと向き合う二項関係になりますが、メディアを介することで三項関係となります。セラピストとクライアント、親と子ども、教員と児童生徒。いずれにおいても、前者にそのつもりがなくとも後者にとっては圧を感じてしまう場合があるのです。両者が横並びとなる三項関係では二項関係に比べドミナントが弱まり、後者がリラックスしやすくなります。
また、デジタルメディアを活用すると、文字のみによらず、絵や音声も総動員しての表現ができるので自由度があがり、これまでの手法では表出の難しかった思いを伝えることができます。インタラクティブに操作しながらの発話は物語の中に入っていきやすいです。全員に有効ではないかもしれませんが、良くデザインされたデジタルメディアは、発達に困りごとのある子どもたちの創造表現を助けます。
言葉の喜びや楽しみは、子どもたちが生きていく上での大きな力となります。社会の中で不自由を感じている子どもたちには尚さら、言葉と物語の深い喜びを味わい、本領を発揮して、幸せに生きてほしいと願います。
新型コロナ感染下での生活が2年にもおよび、きっとどなたにも、気持ちの曇る日があることでしょう。そんな思いもあって、今回は特に丁寧に準備しました。「ピッケのおうち」が終了したので、お見せできるものは減ってしまったのだけれど、受講くださる方に「届ける」気持ちで。
終了後「この時間に癒されました」と伝えてくださる方がありました。残って、おはなし絵カードやおはなしマグネットを手にとり興味を示してくださる方も多々あり、準備の甲斐がありました。もし何かしら届いたものがあったなら、それを次の誰かへ届けて頂けると嬉しいです。ナラティブモードの語りをご自身の場に持ち帰り、試して下さる方がありますように。
講話の中で紹介したいくつかの事例は、このブログにも書き残しています。カテゴリーで選ぶと探しやすいです。
Category:「小児医療」
Category:「発達障害・特別支援(チャレンジド)」
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