「ピッケのつくるえほん」の発想のきっかけは「ピッケのおうち」のペパドルです。
このペパドルで、子どもたちはごっこ遊びやおはなしづくりをします。
けんたくん(7歳)がペパドルでつくったおはなし
浮かんでは消えてしまう子どもたちのつくるおはなしをカタチにして残したいと思ったのが、きっかけです。
6月の「BAクリエイターズサロン」でも、その辺りの話をしました。
8月3331で行ったフラットークの3分トークも「開発の動機」がお題でしたので、その話をしました。
「ピッケのつくるえほん」についてよくいただくリクエストに、
・ 髪型や服装を選び子どものアバタをつくりたい
あるいは
・ 子どもの顔写真をはめたい
ということがあります。
特に親御さんからのリクエストの場合、そのお気持ちは、とてもよくわかります。でも今のところ入れていません。子ども本人を登場させると生活絵本になりやすくテーマを狭めるのでないかと思うので。
ある年齢の発達段階において、生活絵本が大事であることはわかるのですが、「ピッケのつくるえほん」は、最初の動機が上記であったこともあり「ものがたり(Narrative)」に主眼をおいています。
アバタ作成や写真の取込み機能を付加して「お子さんが主役!」とすれば、「商品」としてもぐんとわかりやすく売りやすくなるでしょう。
親御さんも嬉しい、たぶん、子どもも喜ぶでしょう。子どもは自分が写っている写真やビデオを見ること、大好きですから。
でもそれは、私が子どもたちに味わってほしいと願う「喜び」とは種類のちがうものです。また そういうものなら世の中にたくさん既にあって、何も新たにつくる必要はありません。
ワークショップの制作中、たまに、シーンと静まりかえるときがあります。ある時、ファシリテータの方が「朝倉さん、静かになっちゃったので、何か音楽をかけましょうか」と気を利かせて小声で尋ねてくれました。気遣いうれしかったのですが、そのままに。この静寂、この集中は、とても貴重な時間です。
ワッハッハと大笑いするわかりやすい喜び(これももちろん好きです)だけでなく、心を満たす一見静かな喜びも大切に考えています。
他によく言われることに
・ 横向き後向きなど複数の顔向きがほしい
・ 各表情にアニメーションを付け、各操作にも楽しいアニメーションや効果音がほしい
ということもあります。
「ピッケのつくるえほん」が届けたいのは、刺激的な面白さではなく深い喜びです。過剰な機能や装飾的な演出は、本質をぼかしてしまいます。そのため、これらを排しています。
「あると便利」をどんどん追加すると、企業の開発会議で生まれてくる「商品」と変わらなくなってしまいます。長く個人のボランティアとして続けてきたものを、安定運用のために「ピッケのつくるえほん」はビジネス化したわけで、売りやすさも考えねばならないのですが、捨てれぬこだわりがあります。「ピッケのおうち」から始まり、ゆっくり、自分の物差しで、納得いくようつくっています。
子どもは、もともと、ぬいぐるみや車のオモチャなどに自由に自分を投影し、世界を自由に見立ててごっこ遊びをします。
自分の写真やそっくりのアバタを登場させなくとも、登場人物に自分をなぞらえ、自由におはなしをつくります。
「りく、でんしゃにのる」りくくん(4歳)
子どもの想像力と創造力は、私たち大人の予想をはるかに上回り素晴らしいです。言葉は人を形成します。物語をつくり・語り・分かち合う活動を通して、子どもたちが深い喜びを味わう一助になれればと思っています。