今年度も「兵庫県アートとこころのケア講座」(於:兵庫県こころのケアセンター)で講師を務めました。今年で3回目です。この講座では「病児や発達に困りごとのある子どもたちのサポート」に絞ってお話しします。たっぷり3時間あったので、事例を紹介しつつ、場づくりにおける留意点をお伝えし、子どもたちの動きや発言、作品について解説しました。
講話の中で紹介したいくつかの事例は、このブログにも書き残しています。カテゴリーで選ぶと探しやすいです。
Category:「小児医療」
Category:「発達障害・特別支援(チャレンジド)」
お話づくりの楽しみと可能性をご自身で感じてほしくて、中盤で体験時間を設け4~5人のグループで実際につくってもらいました。あまりに皆さんが熱心に楽しんで取り組んでいらっしゃるので、少し延長。すべてのグループが録音まで完了しました。録音時に、声をそろえて歌っているグループもありました。(記事末尾に作品movieがあります)
昔ピッケで絵本づくりをしてくれた女の子のお母さんからその当時届いたメッセージを、今回も紹介しました。
チーコは長いこと周囲とうまく付き合えず、苦しい思いからファンタジーの世界へ逃避しがちだったのですが、ピッケがうまく橋渡しをしてくれました。チーコが作ったピッケの作品を見た先生が「こんなに豊かな世界を持っているんですね!」と、文字を書いて表現するのは難しいけれど、絵と音声ですてきなお話を作れることをご理解いただけました。ピッケの世界はチーコにとってとても自由な世界のようで、チーコにとってピッケは「本領発揮できるところ」らしいです。( 当時 小学1~2年生 )
ピッケは「本領発揮できる自由な世界」。1年生だったチーコちゃんにそう感じてもらえたのは、私にとって今も励ましであり大切な指標です。
その数年後には、チーコちゃん作の俳句作品がNHKの番組で紹介されるまでになりました。過去のメッセージを公開させていただいてよいでしょうかとご連絡をさしあげた際、快諾とともに嬉しい近況もお知らせくださいました。
文字を読んだり書いたりできなくても、物語の主人公になってピッケとたくさんのことに挑戦できました。学びを楽しみ、物語を楽しみ、沢山の感情を表現できるようになったのは、ピッケで培った力だと思っています。幼稚園や学校で長いこと理解されず、理解できず、周囲に溶け込めず、辛い日々を送っていましたし、学習にも大きなハンデがありましたから… 今では国語の課題でパラレルワールドの物語とか書いたりするようになりましたよ。
ASD児など発達に困りごとのある子どもたちにとっては、人や社会と接続するための言葉による表現が、皆と同じを強いられる従来の方法では難しい場合があります。一方、彼らの内側にある言葉は、むしろ豊かに育っています。その豊かな言葉を聞けないのは、本人が困ったりもどかしく思うのはもちろんのこと、社会にとっても、とても残念で、もったいないです。誰もが自分に合った方法で表現できるよう、変わるべきは社会の側です。
体験時間を延ばしてしまったため、後半はやや駆け足になってしまいましたが、ブルーナーの唱える2つの思考様式、論理科学モードとナラティブモードについてと、関連して三項関係の話もしました。療育や医療的ケアでナラティブ法をとる際、インタビューなど言語のみだと向き合う二項関係になりますが、メディアを介することで三項関係となります。セラピストとクライアント、親と子ども、教員と児童生徒。いずれにおいても、前者にそのつもりがなくとも後者にとっては圧を感じてしまう場合があるのです。両者が横並びとなる三項関係では二項関係に比べドミナントが弱まり、後者がリラックスしやすくなります。また、文字のみによらず、絵や音声も総動員しての表現ができるので自由度があがり、これまでの手法では表出の難しかった思いを伝えることができます。インタラクティブに操作しながらの発話は物語の中に入っていきやすいです。全員に有効ではないかもしれませんが、良くデザインされたデジタルメディアは、発達に困りごとのある子どもたちの創造表現を助けます。
言葉の喜びや楽しみは、子どもたちが生きていく上での大きな力となります。社会の中で不自由を感じている子どもたちには尚さら、言葉と物語の深い喜びを味わい、本領を発揮して、幸せに生きてほしいと願います。ピッケでわずかながらでもお手伝いできれば幸いです。
<参加者の皆さんの作品>全11作品が自動再生されます:
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# ピッケのルーツ「ピッケのおうち」はFlashなので、既に「Flashを許可する」壁を乗り越えないと見れなくなっています。今年の12月ですっかり見れなくなるそうです。もしマウス操作のパソコン環境(WinでもMacでも)がありましたら、今のうちに最初のピッケに会ってやってください。私の Win10 × Chomeブラウザでは、「Flashを許可する」をすれば、未だ動いています。年内まで… と思うと寂しいです。
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iPadアプリ「ピッケのつくるえほん for iPad」:https://www.pekay.jp/pkla/ipad
学校向けWindowsソフト「ピッケのつくるプレゼンテーション:https://www.pekay.jp/pkp/
最初のピッケ「ピッケのおうち」:https://www.pekay.jp/house/ ※ Flash Playerのはいったマウス操作のパソコンで。紙工作もあります。
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