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ゲスト講義 @札幌市立大学


29日(月曜)は、札幌市立大学 芸術の森キャンパスにて、DEVELOPMENTAL/オープントーク「子どもたちがコンピュータと出会うとき」(杉本達應研究室主催)としてお話してきました。
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学生さんに加え、同じメディアデザインコースの先生方、学外の企業の方もご参加くださり、なごやかな場となりました。皆さんに、それぞれの関心領域における課題解決の絵本をつくり発表もしてもらいました。
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小学生向けの防災啓発Webサイトを作ることを卒業研究のテーマにしている学生さんは、子どもたちに「おはし」を伝える絵本をつくっていました。(「押さない」「走らない」「しゃべらない」で「おはし」だそうです。はじめて知りました)
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杉本達應先生より「スマホやタブレットの普及にあわせて、教育でのICT活用はホットな話題です。今回は、そんな時代の波に流されていると見失いがちになるデジタル以前の大事なことを再確認できる時間になりました」と講評いただきました。(追記:詳細レポートをアップしてくださいました

講義後、学内を案内していただきました。清家清氏設計の学舎はバウハウスのようで、感嘆の連続でした。隅々美しく機能的にデザインされていて、建物だけでなくさりげなく置いてある椅子(ハンス・J・ウェグナーやコルビジェ!)など学内のすべてがグッドデザインで満ちています。天井高、ドアなど開口部の寸法も、基本モジュールから150%scaleな感じで、とにかく広い。眼に入るすべての物は美しい。そして学内の人口密度が低い。学生さんは思い思いの場で創作しています。教育理念が環境として具現化され、前身の札幌市立高等専門学校の開校から25年近く経つ今も受け継がれていて素晴らしいです。
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主催者によるレポートはこちら>>(参加者のアンケートもあり)

大学でのゲスト講義


先週は2つの大学でゲスト講義させていただきました。

6月17日。青山学院大学 教育人間科学部3年生、杉本卓先生のゼミでは、自身の関心領域で自由に課題を設定し、それを解決する絵本をひとり1台環境でつくってもらいました。
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教員免許取得希望の学生さんもいて、半数近くが幼児教育に関する課題を設定していました。大学院生も2人参加、嬉しいことに内ひとりは昨年に続いての自発的な再受講でした。ICTに対しては懐疑的で、前回は反発する気持ちで講義に臨んだとのこと。受講して考えが変わり、親戚の子どもにもアプリを薦めてくれてその子が何10冊も作り続けているそうで、今ではICTは使い方次第と考え、講義も終始うなづきながら聞いてくれました。

翌日の明治大学 国際日本学部では、「教育の方法と技術」の「タブレット活用の実践と体験」として話しました。
まず岸磨貴子先生による導入。学校知と日常生活の乖離があり、学校で学ぶことを実際の生活で活かすことできていない。例えば「みかん3個とりんこが2個あります。かけたらいくつ?」と 問われれば「6」と答えてしまうようなことが起きている。日常との関連を実感できるような概念理解が重要であると、ジャスパープロジェクトを例に語られました。
岸先生からのバトンを受けて開発のねらいやそのためのデザインについて伝えたあと、5,6人×11の各グループでテーマを決め、深い理解を促すための方法としての「物語」、絵本づくりを体験してもらいました。

以下は、学生さんのアイディアから抜粋。
数学では、cos(コサイン)を身近な例(ケーキを切る)で説明、速さと距離の関係を物語の中で考えさせる、割り算の商と余りの関係を買い物の例で示す、国語では難解な言葉の起源を物語で解説、歴史では、黒船来航時の日米間のやりとりを物語でわかりやすく伝える、英語では、録音機能も使って自己紹介を書く読む話せる、前置詞の視覚化理解、道徳では、食べ物が足りないという状況設定を用意し考えさせるなどなど。
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びっしり書き込まれた「ふりかえりシート」の中にも、さらに多くの授業活用の提案や気付きが記されていました。
・抽象的な概念を絵を使い具体的に理解することで、学校で養った力や知識と、実生活で必要となる力や知識の間のギャップを埋めることができる。
・絵本にすることで積極的に学習に取り組むことができるし、自身の学習理解度を視覚化し整理することができる。
・身についた知識を体系的に人へ説明できるというのは全ての科目で重要であり、深い理解につながる。まとめの時間に取り入れるとよい。
・新しい単元に入るときの導入として。未習事項の英文や数式の概要をイメージでとらえてもらう。
・英単語などの暗記系にも向く。イメージが合わさることで記憶に残りやすい。
・自分のオリジナルで考えつくる教育方法は、学習者の興味もわき楽しく学習できるので、学ぶことが好きになると感じた。

実に密度濃い90分でした。
研究者や若い世代の人と話すと打てば響くように伝わり、ディスカッションによる収穫も多くて、先月の名古屋から続いて、大学で話すことが楽しいです。
来週は札幌市立大学へ伺います。

追記:
岸磨貴子先生によるブログ「6/19 特別講義として「ピッケの作る絵本」」